2012年10月21日日曜日

○「良い時期に良い場所に居る」とはどういう事なのか? その2:内部環境・個別要因としての「良い時期・良い場所」について


さて、次は「個々人の人生のタイミング、置かれた境遇等の良い時期・良い場所、つまり内部環境における”良い時期・良い場所”」について解説したい。


○内部環境・個別要因の”良い時期・良い場所”

先に述べた「外部環境における”良い時期・良い場所”」については、そこに属していれば確かに追い風で上手く行くだろうなあ、そう言った業界なり仕事なりを予測して先回りして発見したいなあと言った発想は比較的少なからずの人が考えるようにも見える。インダストリーライフサイクルやポーターの5 Forces等、良い時期・良い場所を理詰めで調査・分析する手法もある程度確立している。(実際、”良い時期に良い場所に立つ”と言う事を実行に移すとなると中々胆力が要るものの)「外部環境」で良好な位置を探すだけなら、乱暴な言い方をすればある程度は「技術・知識」でどうにでもなる面はある。

一方で、「内部環境・個別要因における”良い時期・良い場所”」については比較的見落とされがちのように思う。感覚的には、外部環境を予測して先回りする事ばかりを表面的に追いかけてしまう人が少なくないとでも言おうか。

しかし、外部環境と同等かそれ以上に重要なのは、「個々人の人生のタイミング、置かれた境遇等の良い時期・良い場所、つまり内部環境における”良い時期・良い場所”」であると筆者は考える。そこで、この点については比較的字幅を割いて説明したい。

内部環境における”良い時期・良い場所”についても、幾つかあると考える。今回は先ずはその一つを例示したい。


○「何が好きで何が得意なのか・何をやりたいのか」が明確になった時期に、その分野・その場所に居る事。

最初に述べておきたいのは、最初に何にも増して重要なのは、「外部環境の前に先ず自分自身、己をきちんと理解する事」「何が好きで何が得意なのか・何をやりたいのかが明確になった”時期”に、その分野・その”場所”に居る事」だと言う事である。今回は、この点について幾らか長々と書いてみたい。興味がある方はおつきあい頂けると幸いである。

経済的成功と言ったそっち系の話題の話をすると、成長する国・地域はどこか?税金も安いし何か繁栄してそうなシンガポールか?シリコンバレーか?他の新興国か?成長業界はどこか?投資銀行?ネット関連?職種は何が流行るのか、アナリスト、デリバティブ、証券化、M&A、ヘッジファンド?等と、外部環境的に「追い風っぽい場所」を探す事ばかりに腐心していて、儲かる場所を探して頻繁にジョブホッピングをし、何がしたいのか傍から見ても本人自身もよく理解していないような人がどうしても散見されるように思われる。ビジネス・企業でも同様で、売れそうな商材・分野に飛びついては結局強みを出せずに失敗、を繰り返すような所は少なくない。

こう言う人・企業は、「次にどこが来るのか、ブレイクするのか予測して、先回り出来れば儲かる、それが重要だ」と考えているように見える。確かにまあ、株のトレード等の「お金をあちらからこちらに移せば良い事、ダメなら損切りして次に行けば良い類のゲーム」ではこれはある程度は言える。

しかし、仕事・キャリア等でこれを単純に適用するのは筆者は賛成しない。理由は幾つかある。今回はこの理由を述べる中で、「内部環境・個別要因における”良い時期・良い場所”」について考えるきっかけを提供出来ればと思う。


-「仕事・キャリアは株のように流動性が高くない」かつ「過去の経歴が将来の経歴に影響を与える経路依存型のゲームであり株のようにトヨタを損切りして次はネット関連、と言う訳には行かない」と言う面。

株の場合は、好きなだけびゅんびゅん売買すれば良い。しかし、キャリアの場合は、転職するにも金融のような流動性の高い世界でも2-3年に1社位が限界である。

また、同じ分野であれば金融等の場合であれば比較的価値も維持向上が図りやすいが、全く違う分野を短期間でジョブホッピングばかりしていると価値が看過できない程に下がる。履歴書がどんどん長くなる一方でそこにある程度の一貫性がないと、「何がやりたいんだこの人は」「このひとの専門はなんなんだ」と言う雰囲気が否応無くにじみ出てしまい、次第に誰からも相手にされなくなり易いという事である。

更には、いったんある職種・分野を手掛けたらそれを変える事が出来る・色々試行錯誤出来るのはせいぜい30歳位までであり、30代以降で未経験の仕事をするのは相応に厳しくなる。40歳になったらキャリアアップ云々は概ね終了と考えて良いだろう。転職自体も容易ではなくなる。

もっと言えば、大手企業から小規模のベンチャーに移ったり独立したりする事は移った先・独立した先で成功するか否かを別にすれば比較的簡単に可能だが、基本動作から学び直したい・失敗したから働く口を確保してやり直したいからベンチャーや個人商店から大手企業に入社したい等と言う事は特に日本の場合は非常に難しい(殆ど無理だろう)。だから一般的には「最初は大手企業に入って履歴書・信用・ベーススキル等を磨いてから小規模ベンチャーに行ったり独立する方が良い」と言うアドバイスを年配者はするのである。筆者の考えでも「今時終身雇用で一生安泰等と考えて大手企業に入るのは危険だが、特段物凄くやりたい事がある訳でなければ、キャリアステップの最初の一歩、学習・キャリア模索の場として大手企業を選ぶのは妥当」だと思う。

こう言った「流動性の低さ、タイムホライゾンの長さ」「物事の順序」と言うものがキャリア構築にはあるのであり、比較的低コストで損切り・利食いしては短期に頻繁にポジションを変えられる株のトレードとは全く異なる点である。こう言ったゲーム特性の違いを理解した上で、詰まる所「何度か弾は撃てるが、幾らでも弾が撃てる訳ではない」と言う事を理解して、きちんと腰を据えてキャリア構築・職業選択については考える必要がある。

そして、腰を据えてキャリア構築・職業選択について考えるとなると、外部環境の分析もいいが、それ以前に「本人自身が何が得意なのか、何をしたいのか、何なら楽しくやれるか」と言った点について考える事は不可欠である。第一には上記のような理由から、「外部環境の前に先ず自分自身、己をきちんと理解する事」が重要であると筆者は考える。


-「視点が表面的になり、どうしても参入タイミングが遅れがちになる」と言う面。

また、表面的な理由で儲かりそうな分野を探しては移ると言うやり方では、どうしてもブームの後半からゲームに参加する事になりがちで、ゲーム的に有利な展開で進められないという面もある。業界内部者・職種内部者よりも、視点や知識が表面的になるしブームが分かるのが遅くなりがちのように思う。

儲かる話と言うのは、大概の場合はそれが一般に明らかになるだいぶ前から「兆し・黎明期・助走期間」と言った形で底練りを続ける時期がある。元来その時期(の出来れば後半、成長期入りする直前位)から参入するのが一番良い訳だが、表面的に儲かる事ばかり求めて右往左往する外部の人間にはこう言った段階の「きざし」と言うのは中々目に入らない。その時点では儲からないし、地味だからである。

一般の目にも分かりやすい形で情報が入ってくるタイミング、例えばマスコミで成功者が話題になったり、学生の就職ランキングで上位に入ったりするようになるのは、得てして成長もピークアウトに達しつつある時が多い。また、既に競合もひしめいており、企業であれば多数の参入者も出てきているだろうし、仕事であれば高学歴・ハイスペックの志望者が大挙しているだろう。競合が多くなると自身が提供出来る付加価値はどうしても減りがち・有り体に言えば価格競争等にもさらされがちであるし、ライバルとの競争もしんどいものになる。そう言った時期になって飛びつくのでは既に遅いのである。しかし、表面的な儲け話の事ばかり考えていると、どうしても手遅れになってから飛びついてしまう傾向にあるように思われる。

株でもブーム・話題になってから飛び乗るのでは、飛び乗ってはピークアウトして飛び乗っては…の繰り返しになってしまいがちであるが、正にその状態である。筆者の場合、全くノーマークの銘柄がブーム・話題になった場合、相当長期で見込める投資テーマなら別だが、見つけた者勝ち的な話の場合は特に、見送って次に行くようにしている。テンポを「後から飛び乗ってはピークアウト」ではなく、「事前に仕込んでプロフィットテイク」のサイクルにしないといけない。実業の仕事についてもこれは同様だと思う。

同業者を見ていても、投資銀行等でその時のブームに相乗りするような形でデリバティブが儲かっているからそっちへ、証券化が良いからそっちへ、プロップトレーダーも分が良いみたいだ、バイサイドも温くて楽そうだしちょっと一休み代わりにバイサイド行くか、履歴書作り・所得回復のためにセルサイドに戻るか…等と哲学なしにポジション変更が激しすぎると、一時的には高いボーナスが貰える時もあるものの、リーマンショックの後に長らく仕事が得られなかったり、年齢と共に履歴書的にコーナーに追い詰められてしまい「次が無くなる」事が少なくないようにも見受けられる。ブームの後半から相乗りすると、その後にショック・リストラ局面が訪れる確率が高くなるし、そうなった場合には後発参入者で社内政治の基盤も弱い場合も多い事から解雇対象にもなり易いように思う。

小生の従事しているヘッジファンド業界についても然りである。隣接業界の投資銀行等に勤めている者ですら、少なからずが米国の成功事例等を見ては弊業界に過大な夢を抱いてしまって、立派な投資銀行のキャリアを捨てて参入しては散っており、散った後の職探しには難航しているケースが少なくない。注意が必要である。

昨今、産業・企業・職種等のライフサイクルも短期化しており、職業選択・キャリアステップ等のタイムホライゾンより、産業・企業・職種等のライフサイクルの方が短期間で栄枯盛衰するようになってしまっているようにも思う。この点を考えても、外部環境で既に素人目にも儲かっていそうだと分かるようになってから次々波乗りをしようと思っても、上手く行かないようにも思われる。

では「兆し・黎明期・助走期間」のうちに参入するにはどうすれば良いかと言うと、「外部環境の前に先ず自分自身、己をきちんと見つめて、理解する事」であると筆者は考える。ベクトルを外へ外へと向けるのではなく、先ず内側へ向けて自己の内部を旅してから、外部に帰還するのである。

つまり、別に全ての外部環境のブームに乗れる必要はない、と言う事である。人生とは、バフェットで言う所の、「見逃し三振のない野球」である。ボールは次から次へとどんどん投げられて来る。昨今時代の変化も速くなっているので、どんどん球が来る。これを全部振りに行く必要はないのである。3ストライクで三振と言ったルールもない。先ずは自身の得意な球をじっくりと見定めて、それが来た時だけ渾身の力で振り抜けば良いのである。

上記の野球の例えを実際の話にすると、自身が好きだ、パッションを持ってやれると言う分野を探求していく中で、幸運も重なって「成長のタネ・兆し」の分野に当たる事が出来たり、既存分野に一工夫を加えてProfitableなビジネスに出来たりするのである。好きな分野であれば自然と必死に考えるし長時間の仕事も余り疲れずにやれる。興味も持続するため他の人では中々気づかないような、自身に合ったニッチを探し出せる可能性も高くなる。

そう言う意味で、好きである・情熱を持てる分野を見つけた”時期”に、情熱のもてる”場所”で戦うというのは、それだけでその人にとって大きなアドバンテッジになるし、外部環境に関わらず(仮に衰退産業であっても)その人にとっての”良い時期・良い場所”になりうる。自身が好きな分野であれば、一見すると衰退産業のように見えても、自分の趣味・特技を生かした意外なニッチ分野等も発見しやすいように思う。例えば、とうふ業界のヒット商品「ザクとうふ」等はその手の例として挙げられるだろう。

一見遠回りのようだが、この方が結果的には近道になることも多いように筆者個人的には思う。

こう言った理由からも、外部環境ばかり追い回す前に、先ず己の理解からするのが重要であり、「何が好きで何が得意なのか・何をやりたいのか」を人生の出来るだけ早い時期に模索・試行錯誤を重ねて発見し、これが明確になった時期に、勝負出来る分野・その場所に居るのが良い、と言う事になる。

高校生・大学生・社会人の最初の数年位の時期等は特に、浅知恵で儲かってそうな業界・安定して有利そうな業界等を探して右往左往すると言った事をするのではなく、「自分は何が好きで何が得意なのか・何をやりたいのか」を色々な人生経験、模索・試行錯誤を重ねて発見する事に意識を向けて欲しいと思う。これが早めに見つかった人ほど、それだけでその人自身にとっての「”良い時期・良い場所”」は近づくように思う。


-そもそも論的な話。

更に筆者個人の考えを述べれば、そもそもの所で、表面的に儲かる分野ばかり探して右往左往するより、ちゃんと本音で楽しいと思えるような事をやった方が人生として清清しいだろうとも思うし、金銭的に成功しようが失敗しようが悔いがないと言う面においても良かろうかとも思う。好きな分野をさがして、そこで勝負に出る、と言うのは、”後悔”と言う人生において最も避けたい損失のリスクをヘッジ出来て良かろうかと思う。

以上より、「外部環境の前に先ず自分自身、己をきちんと理解する事」「自身が何をやりたいのか腑に落ちた”時期”に、やりたい分野・”場所”で勝負する事」を、筆者としてはお勧めしたい。

他にも”内部要因としての良い時期・良い場所”として説明する事柄はあろうかと思うが、だいぶ長くなったので次回に回したい。

○「良い時期に良い場所に居る」とはどういう事なのか? その1:外部環境の”良い時期・良い場所”について。



最近、「良い時期に良い場所にいる事が重要」と言った事をツイッターで何度か呟いた所、比較的反響があった。今回はこの点について書いてみようと思う。


○円滑なキャリア・人生を重ねる上で重要なのは、「良い時期に良い場所にいる事」。

筆者は末席ながら中小型株など含めて延べ1000銘柄以上の企業を過去取材して企業の栄枯盛衰や経営者・起業家等の人生模様を観察する仕事をして来た。また、同業者についても経済的に成功した人、いったん成功したが異界(?)行きとなった人、知識やスキルは高いがボチボチ・いまいちな人、全般にボチボチ・いまいちな人など色々な人々が筆者の前を来ては過ぎするのを気づいたら10年以上眺めていた事になる。そうやってこの株式市場と言う栄枯盛衰・祇園精舎の鐘の声の縮図のような世界と関わる中で実感した事がある。

それは、相場においては「良い時期・タイミングに良い場所にいる・良いポジションを取る」事に尽きるのと同様に、円滑なキャリア・仕事を重ねる上で重要なのは、「良い時期に良い場所にいる事」であるという事である。つまり単に知識が沢山あり資格があるとか、秀才で優秀だとか、偏差値が高い・高かったと言った事柄は、少なくとも経済的・私生活等も含めた人生全般における成功のためのKey Factorではないと言う事である。この点から勘違いしている人でひとかどの人物になっていると言う事例を筆者は余り見ない。

「良い時期・良い場所」。この言葉の出所は筆者ではない。元ゴールドマンサックスのプロップトレーダーで、少し前までヘッジファンドのゼンパーマクロを運営していたクリスチャン・シバ・ジョシーの言葉である(注)。言い得て妙、名言だなあと思う。


○「良い時期」「良い場所」とは?

では、「良い時期」「良い場所」とはどういう事だろうか。

筆者の定義では、「良い時期・良い場所」について二つの定義を持っている。一つは「外部環境の良い時期・良い場所」、もう一つは「個々人の人生のタイミング、置かれた境遇等の良い時期・良い場所、つまり内部環境・個別要因における”良い時期・良い場所”」である。以下に、外部環境、内部環境に分けて「良い時期・良い場所」について記載したい。内容が多くなりそうなので、恐らく数回に分けて書くと思う。


○外部環境の”良い時期・良い場所”の定義。

外部環境の良い時期・良い場所とは、例えば以下のようなものを指す。

-マクロ経済がボトムから回復に向かう正にその時のその国・地域。
-民主化・若い人口動態・外資導入等により新興国が先進国に移行していく正にその時の国・地域。
-黎明期から成長期に移行する辺りの業界。例えば80s~90s前半位の外資系金融東京支店。
-スタートアップから成長期に移行する直前、上場する手前位の企業。
-窓際職種・安月給のオタク職種から花形職種に移行する直前位の職種。

言ってみれば、「マイナーでうだつの上がらない状態から、スポットライトが当たり始めるまさにその過程」「カネが無かったのが、丁度大量のマネーが流入し始める正にその過程」位のタイミングである。

2000年代の前半、日本経済がボトムから回復に向かう正にその時に、ある同業者は低利でフルローン全開で不動産を買い、ひと財産を作った者がいる。シンガポール人はただその国に住んでいただけ、たまたま建国直後に一戸建てを買っていただけで今や5-10億円長者である。業界・企業だとITバブル崩壊直前、上場直前に上手く新興企業に入社出来た者だと一般平社員・秘書などまで応分の株を貰っていて数千万円~億円単位のお金を得た者も居る。80年代には当時冴えない職種だったらしい株式調査部に配属されてもそもそと統計資料に埋もれていて会社もサボりがちだったような当時の若者は、90年代の間接金融から直接金融のシフトや投資家の機関化の進展等に伴い「アナリスト」として花形の高給取りになった。

こう言った人たちは、勿論中には虎視眈々と「まさにその時」を意識的に狙って経済的に成功した者もいるにせよ、少なからずは「たまたまその時期にそこに居たから成功した」と言う事である。しかしその時期にその場所に居れば(それが持続可能か否かと言う問題、私生活での幸せと言ったものと得てして両立出来なかったりしてバランスを崩しがちだと言った問題もはらむものの)実際金銭的な観点に関して言えば、一時的にせよ成功するものなのである。

これを「人生所詮運だ」等と嘆く人もいるが、嘆いた所で何の意味もない。人生そう言うものなのだ。ただその時にその場に居ただけで幸運を享受する事もあればその逆もある。人生そう言う面があるというのは変え難い事であり、これを受け入れる事から全ては始まると思う。

また、上記のような「黎明期から成長期への移行」だけでなく、逆に以下のような「成功・バブルが弾ける瞬間」「成熟・衰退後の残存者メリット享受・需要の復活」と言った局面も、チャンスを上手く捉えられれば”良い時期・場所”となりうる。

-バブル崩壊・経済崩壊の一歩手前。
-衰退・リストラが長期間に渡り続いていて、残存者メリットが出始める辺りの業界。

前者の例では、日本人ではソロモンブラザーズで日本のバブル崩壊にBetして巨大な利益を上げた明神茂氏が居る。氏はソロモンブラザーズにて(東京支社ではなくグローバルの)経営陣にまで上り詰め、現在はヘッジファンドを運営している。また、最近の例ではサブプライム崩壊で利益を上げたポールソン等が有名である。

こう言ったパターンだと、「たまたま」で利益を上げるのは中々難しく、「長い長い無名期間を経て、ついに花開く」と言うパターンが比較的多いだろうか。明神氏は1989-1990のバブル崩壊で利益を上げたが70年代から証券業界で仕事をしていたし、ポールソン氏は80年代よりコンサル・投資銀行・ヘッジファンド等を転々としてサブプライム危機の前はイヴェントドリブン等を手掛けており、比較的目立たないヘッジファンド業界の一人、と言った程度であった。

後者としては2000年代前半~中盤の鉄鋼業界・海運業界・資源会社(日本の場合商社)等が挙げられる。これらの業界は90年代は供給過剰で苦しみ、販売価格はずっと低迷しており、リストラや生産能力の縮小・供給能力の削減・バランスシートの劣化・業界再編等がずっと続いていた業界である。そこに2000年代に入って中国と言う巨大需要が発生した事で一気に需要が増大し、再度時代の寵児へと返り咲き、ボーナスも増えたというパターンである。株価も大きくドライヴした。就職等でも学生に人気の業種に返り咲いた。(まあぼちぼちピークアウトかな等とも思う訳だが、それはここでは置いておこう)

他にも例は色々あるだろうが、「外部環境における良い時期・良い場所」とは、言ってみれば、外部環境の変化率が一番大きい辺りと言う事だ。ボラティリティイズフレンド、ビッグチェンジのタイミングはチャンスなのである。オプションで言えばガンマロングのオプションの価格が一気に数倍に化ける手前のあたりの時期に、オプションのロング的なポジション・立ち位置を確保しておく事が重要だということである。それを具体例で説明すれば、大まかには上記のような状況が「外部環境の”良い時期・良い場所”」と言う理解を筆者はしている。

次に内部環境・個別要因における”良い時期・良い場所”について説明したいと思う。上記のような「外部環境」については実は重要度としては必ずしもそれ程には高くなく、実際の所は「内部環境・個別要因における”良い時期・良い場所”」と言うのが非常に重要だと考えて居る。とは言え、文章もだいぶ長くなったので次回に回すことにしたい。


注:出所はこちら。



成功したヘッジファンドマネジャーのインタビュー集である。Amazonで星1つになっているが、これは最悪の翻訳者による、グーグルの自動翻訳以下と思われる翻訳の酷さのせいである。原著者はファンドオブファンズの運用者できちんとした知識をベースにして取材しているし、原著の内容自体はマーケットの魔術師と並べて良い位大変に良いと思う。興味のあるかたは原書を当たるか、翻訳の酷さを割り引いて何とか日本語で読むかして頂けると幸いである。

2012年10月9日火曜日

○シンガポールでキャリアを積む事の善し悪し、馴染めるか・馴染めないかに等ついての幾つかのポイント。




さて突然だが、筆者のシンガポール生活も早いものでもうすぐ2年が経つ。そんな折りに、最近「シンガポールで就職・転職するべきか、日本で働くべきかで迷っている」と言った相談を頂く運びとなった。ほんの少し前まで筆者自身が右も左も分からずシンガポールに越してきたというのに、時の経つのは速いものだ。

そこで、今回は「シンガポールの善し悪し」「シンガポールに馴染めるか・馴染めないかを分ける事になるいくつかのポイント」を、前半はキャリア構築について、後半はシンガポール生活全般に話を広げて書いてみようと思う。但し筆者の出自が金融業界、しかもヘッジファンドと言うやや特殊な業界であり、製造業等の状況については疎い事は断っておく。シンガポールでの就職・転職、新生活を考えられているかたに、何かしらの参考になればと言った程度でご理解頂けると幸いである。


○仕事・Career Opportunityで考えると東京よりもシンガポール。但し新卒の場合、低付加価値労働の場合、非金融業界の場合は注意が必要。

・金融業界の場合は、仕事・Career Opportunityで考えると東京よりもシンガポールだろう。

先ずは仕事面だが、こと金融業界に限って言えば、昨今は東京よりシンガポールの方が仕事があると思うし、転職の選択肢も開けていると思われる。東京は毎日リストラの話ばかりである一方、シンガポールでは多少景気が後退したとは言え、グローバルハブとしての機能は健在であり人不足気味である。東京では熟練の経験者でも職に就くのが難しい一方で、シンガポールで働いている周囲の人を見ている限りではポテンシャル採用・未経験採用で「仕事を貰いながら成長できる」と言った機会がシンガポールにはまだあるようにも思う。上手い具合にそれなりに有望なキャリアが築けそうなポジションでのオファーがシンガポールで出たのであれば、ベースサラリーが多少安いのは大目に見てでもシンガポールで仕事をする価値は(税率が低い事に加え、キャリアビルドの観点からも)あると思われる。

キャリア構築についても、こと金融業界においては、東京からシンガポールに行くのは競争率も昨今高くて中々難しくなりつつあると思われる一方で、シンガポールから東京に戻るのは、(あくまでシンガポールで前向きにスキルアップ・キャリアビルドに励めばの話で、あくまで金融業界に限った話ではあるが)比較的可能と言おうか、少なくともシンガポール勤務によってその後の東京でのジョブサーチが著しく不利になるという事は無いだろう。東京とシンガポールの両方で似たような仕事をするオファーを同時に貰った、と言った状況なのであれば、シンガポールでの仕事をチャレンジする価値は十分にあるだろう。


・一方で考慮点も幾つかある。新卒、低付加価値労働、非金融業の場合等。

但し、一方で考慮点も幾つかあるので以下に列挙する。


-新卒の場合。

先ず新卒の場合である。

帰国子女など英語が出来、海外の大学等で学んで海外でのインターン勤務経験等も既にある学生で、低付加価値な単純作業ではなくきちんとしたキャリア構築機会のあるような仕事でオファーが貰えた場合は、最初からシンガポールでも差し支えないと思う。シンガポールは海外の中では比較的馴染むのが容易な「イージーな海外」の部類と言えるし、インターナショナルな環境で過ごす事に慣れていれば比較的容易に社会人のスタートが切れるだろう。但しこの場合、日本的なビジネス慣習・マナー等については完全に疎くなってしまうため、日本に戻る事を考えられている場合は、その際にカルチャー面のギャップで悩む事になる可能性はある。この点は留意して頂ければと思う。

一方で、海外経験のないいわゆる「純ドメ」の場合、「社会人デビュー」と「海外生活」と言う2つのハードルを一挙に越えなくてはならない事になり、かなりチャレンジングになる。日本の大手企業のような懇切丁寧な新卒教育体制等も、大方のシンガポール現地企業では期待しづらいであろう。日本で生まれ育った海外在住・勤務経験のない一般的な日本人の場合、最初の社会人のイロハやコアとなるスキルセットは日本で身に付けて、それからシンガポールや香港等での勤務を目指す、と言う方が(個別の事情で結論は勿論変わりうるが)一般論としては妥当な場合が多いだろう。


-低付加価値労働の場合。

次に単純作業・低付加価値労働の類についても注意が必要である。例えば飲食業のウェイター・ウェイトレスの類、コールセンターでの日本語での受け答え、アルバイトでも業務遂行可能な類の一般店員、その他いわゆるオフィスワーカーでも一般事務等の仕事だと、シンガポールでは日本では考えられない位の「薄給」になり、昇給機会も限られる。これはシンガポールの給与が安すぎと言うよりは、日本の一般労働者に対する給与がその付加価値の程度の割に高過ぎなのだと言った方が良いかも知れない。こう言った事情もあるので、アジアのメイン拠点を日本から香港やシンガポールに移転する動きが加速しているのであり、雇用が海外に流出しているのである。

シンガポール(ないしは恐らく香港等も)では、低付加価値労働者に対する待遇は極めて厳しいものがある。日本だと、総合職の入口として最初の社会人のイロハの学習として雑用もやらせるが後々ちゃんとキャリアアップの機会がある、と言った事もあるだろう。しかしシンガポールだとそうは行かない面があるようにも見受けられる。入口として「使い捨て」のポジションで採用されてしまうと、キャリア的に後が無くなってしまう面があろうかと思う。つまり、極めて安い時給・給与でコキ使われて、ローカルのシンガポール人や日本以外の国から来た外国人対比での付加価値も出せずキャリアアップもままならず、キャリア面等の成長機会等は全くあるいは殆どない、と言った袋小路の状態になりがちなのではないかと言う事である。この点注意が必要である。

こうなってしまうと給与も安いため生活するのでも四苦八苦、昨今シンガポールの物価水準も家賃を中心に高騰しているため蓄えも全く貯まらず、キャリアビルドも出来ないため日本に帰っても仕事がなくて日本帰国もままならない、と言った事態に陥りやすいように思う。シンガポールは、吉野家やコンビニのバイトで時給1000円(15SD)も貰えるような「一般労働者に優しい国」ではない。単純労働しか出来ない人は、可能な限り「労働者に優しい国、労働法規が労働者有利になっている国、ニッポン」で高い時給の恩恵を受けた方が良いだろう。

-金融業界で無い場合、製造業等の場合。

金融業界の場合、人材の流動性も高いし、地域間での人の移動も少なくない。地域が変わってもやる事は大差ないと言う面もある。このため、例えば一旦は香港やシンガポールで勤務した者が何かの事情で日本に戻りたくなった場合も、昨今労働市場の状況が大変厳しいので楽ではないにせよ、少なくとも海外で勤務していたと言う事が日本に戻る・シンガポール以外の国で働く等の選択肢も考えた際に不利に働く事はそう無いだろうと思う。(とは言えまあ、昨今東京のジョブマーケット自体が冷え込んでしまっているし、シンガポールもすっかり気に入ってしまったので、筆者個人的には片道切符かなと言う気持ちでやってはいるけれども。)

一方で、製造業等の場合で、日本企業からの一時的な海外駐在派遣ではなく、シンガポールへローカル採用で就職した場合、「次のキャリアの出口」が見出しづらい面があるかも知れない。この点は注意が必要である。

日本企業の場合は新卒生え抜きを重視する面も強いだろうし、労働市場の流動性も低い。いったん転職してしかも海外に出てしまい日本企業の新卒一括採用・生え抜き重視のカルチャー・レールから「外れて」しまった人材を受け入れられる素地は、これだけグローバル人材の重要性が叫ばれている昨今においてさえ必ずしも出来上がって居ないようにも見受けられるのである(そんな事で日本企業が生き残ってゆけるのか、それで良いのかと言った「ベキ論」は今回の主題から逸れるので省略する)。給与水準についても、ローカルハイヤーだと往々にして日本よりも安くなりがちで、一般的なローカルハイヤーだと、例えば日本で家が買えるような所まで蓄財するのが難しい面もあるかも知れない。そんな訳で、何かしら応分の付加価値・特殊な強みがあれば別だが、日本に戻りづらい・片道切符になってしまいがちの面はあるかも知れない。

そんな訳で、日本企業の派遣駐在員等の立場で期間限定で地位も守られた状態でシンガポールに来る際は深く考える必要もないだろうが、ローカル採用として本格的にシンガポールに移住を考える際にはこの点は良く考える必要があるだろう。つまり、一回海外に出たからには外資系メーカー等を転々としながら海外でキャリアアップすると言った覚悟が必要になるかも知れないし、それに応じた語学力やスキル面でのEdgeを磨いてゆく必要が出てくる可能性が高くなるといった事柄への考慮が必要になるかもしれないと言う事である。入口を考える際は、出口・落とし所も考えておく事は、株のトレードに関わらずキャリア構築においても大切であるから、この点記載しておきたい。


○生活全般での留意事項:「シンガポールに馴染めるか・馴染めないか」の分け目になりそうな項目幾つか。

仕事面について記載したので、次は生活全般における「シンガポール生活の善し悪し」「シンガポールが好きになれるか馴染めないかの分かれ目になりがちなポイント」を、筆者の思い浮かぶ範囲で幾つか列挙しておきたい。

筆者個人的には、シンガポール生活は非常に心地よく、お陰様でエンジョイさせて頂いている。筆者の場合、夏も好きだし、インターナショナルで開放的な雰囲気でかつアジアなので黄色人種でも居心地が良く適度にほおっておいてくれるし、適度に陽気でせかせかしない感じが気に入っている。景気も良く、黄色人種・日本人への差別もなく、治安も良く、適当な英語でも通じるし発音云々で見下されたりする事も余りなく、子供の教育等の面でも困る所もなく、日本食レストランやスーパーも豊富で、日本人コミュニティも確立しており医療等も(値段は高価だが)日本語で対応してくれる所がある事等を考えると、海外の中では「One of the easiest海外」であると考えて良いだろう。

しかし、シンガポールが好きになれない・馴染めない日本人も少なからず居るのもまた事実である。

そんな訳で、以下にシンガポールに馴染めるか馴染めないかの分水嶺となりそうなポイントを、思いつく範囲で参考までに幾つか書いておこうかと思う。下記とどの程度折り合いを付けられるか、と言った所が、「シンガポールを楽しめるか否か」を分けるポイントだろうと思われるので、参考にして頂ければと思う。


・シンガポールの”ある種の適当さ”に馴染めるか否か。

シンガポールが嫌になる人のパターンとしては、良くあるのが「シンガポールの”ある種の適当さ”に我慢ならない」というパターンが挙げられる。

待ち合わせすれば30分位は遅刻して当たり前、仕事が残っていてもローカルのシンガポール人は余り遅くまで仕事しない、職場が忙しくてもMedical Leaveも可能な限り取るような人も散見される、一部の優秀な人は優秀だけどそれ以外は日本の基準で行くと余り仕事熱心でもない、清掃業者や配送業者等のオペレーションがいい加減、自分が悪くても中々謝らない、と言った具合で、細かい点を挙げるときりが無い。むしろ日本が全体的に「きっちりしすぎる位几帳面」と言えるようにも思われる。

これらの点については、シンガポールはライフワークバランスを重視する人が日本よりも多い、景気も良いためそこまで必死に細部に渡り正確・丁寧に会社・仕事に奉仕しなくても生計位は何とかなってしまう、容易に自身の非を認めると不利になるので日本人のように簡単には自身の非を認めないのはシンガポールに限らず海外の一般的傾向、と言った背景があるという事で納得する以外ない。几帳面で、こう言う事にイライラしてしまうタイプの人にはシンガポールは余り向かないように思う。逆に、南国で、景気も良いし、多少の事は余りきにせず陽気に稼ごうね、と言った人には比較的向いているかと思う。筆者も当初は相応に面食らったが、慣れはあるように思う。


・経済は先進国入りしたが文化面が未成熟・発展途上である事に馴染めるか否か。

その他、「文化がない」と言う所を好きになれない人も居る。特にヨーロッパに住んでいて欧州での生活が好きだった人、ニューヨークに住んでいてArt/Entertainment関係が凄い好きな人、日本のハイレベルの食文化・レストラン等に慣れている人、服飾・ファッション等が好きな人には、この点が好きになれない人が少なくないようである。皆税金が安くてお金儲けし易くてPolitical Riskも低いからビジネスライクな理由でシンガポールに住んでいるだけで、味気ないと。

この点については、まあ歴史の短い国であるし、ここ10-20年位で経済成長ありきで急成長した国だし、文化面が無いとまでは言わない(良く見ればちゃんとある)が成熟していないのは仕方ない面はあろうかと思う。ニューヨークやパリ、東京と比較するのはちょっと無理があろうかと思う。服飾や食文化等に変化・奥行きが乏しいと感じられるのは、南国で四季がないと言う、立地上仕方ない面もある。

とは言え、シンガポール在住者からすると、それでもここ数年で相当改善していて、最近ミュージカルやコンサートの類も明らかに力が入っていて増えているし、有名ミュージシャンのライブツアー等でもシンガポールに来るようになっているし、レストランの質もここ数年でかなり改善しておりミシュランで星が付いている店も少ないにせよ出てきている。おしゃれなカフェ等も増えているし、一昔前はTシャツにビーチサンダル、ノーメイクで闊歩していたシンガポール人女子などもここもと徐々におしゃれになってきたりしている。寺院なりシンガポール地元のソウルフード、昔ながらのシンガポールの街並みと言った「地元文化」も良く見ればある。この辺は考え方次第かな、と思われる。


・「四季がない」事に耐えられるか否か。

当たり前だがシンガポールは(雨季傾向・乾季傾向、暑い、プールで泳ぐにはやや涼しい等の微妙な差はあるが)ずっと夏である。季節の変化がなく、服もずっと夏服のまま、季節の食材を使った変化に富んだ食事、と言ったものもない。なんだかずっと居ると、まったりと始終暑い南国の空の下、変化がないまま気づいたら時間が1年、2年と経過している、と言う感じになりがちでもある。温泉もないしおでんに熱燗で一杯の楽しみもない。暑いのが身体的に苦手な人にも、ちょっとしんどいかも知れない。

まあ、こればかりは仕方ない。シンガポールのチャンギ空港も非常に使い勝手が良いので、時々四季のある国に旅行にでも行って楽しむ、と言う他ないだろう。場所的に、周辺のアジア各国等も旅行し易いし、楽しもうと思えばそれはそれで楽しめると思う。


・「東京23区位の広さしかない」「世間が狭い」事に耐えられるか否か。

これもまあ、そうなものは仕方ない。利点としては、どんなに遠距離通勤でも1時間以内で通勤可能で大概は30分以内で通勤出来る、買い物・繁華街などコンパクトにまとまっており便利と言う事がある。良い部分もある。

しかし、逆に言うとシンガポール国内に居る限りは夜の遊び場等も含めてこの範疇で遊ぶ事になり、選択肢が限られると言う面は否めない。シンガポールに住んで1年もすれば大体行く所も固定化してしまい、やる事も映画・買い物・外食・旅行・その他何がしかの趣味なりスポーツなりと言った具合で固定化してきて、だんだん飽きてくると言う面はあるかも知れない。

更には、「世間が狭い」と言う面もあり、繁華街を歩いていると友人知人、果ては昔の彼氏彼女に不倫相手やらに遭遇する可能性も日本・東京等に居る際よりもかなり高い。この点を愚痴る日本人も少なくない。まあ気持ち的には分からなくもない。

しかし、少し考えて欲しい。皆さんが日本に住んでいる・いた時、「映画・買い物・外食・旅行・その他何がしかの趣味なりスポーツなり」以外の何だか物凄く楽しくて充実した事をしていた人がいかほどにいるだろうか。筆者の見立てでは、こう言う愚痴を言う人の8割がたは日本でも愚痴っているだけでリア充ライフを過ごしていたとは考え辛いようにも思われる。シンガポールで遊ぶのに飽きてくれば海外旅行をすれば良い。チャンギ空港も便利だし、金曜夜の便でタイやバリ島等に出かけて日曜夜に帰って来ると言った事も出来る。温泉が恋しくなったら休暇の際に日本に旅行すれば良い。趣味のクラス・集まり等も、ヨガにダンス、各種ジャンルの音楽に各種スポーツ、料理に果ては茶道等まで一通り揃っている。加えて日本のテレビや映画等も簡単に観られる環境にもある。日本語の書籍も簡単に買える。ここまで日本人にとって恵まれた海外はそう多くはなかろう。ものは考えようである。

とは言え、「世間が狭い」事の窮屈さと言うのは、シンガポール在住が長くなると感じる面はあるかも知れない。日本人コミュニティとなると非常に狭いし、更には日本人コミュニティかつ同業者、等と言うと本当に狭くなる。例えば男女関係などで狭い世間で余りドロドロした付き合いを後先考えずにしてしまうと、後々気まずい思いをするかも知れない。

この点については、「君子の交わりは淡きこと水の如し」で、シンガポールにおける人間関係に対する距離感の取り方を工夫する等と言う事になるだろう。


・「一人身向けの香港、家族向けのシンガポール」と言った点についてどう捉えるか。

海外勤務経験者の一般的な意見として、「一人身向けの香港、家族向けのシンガポール」と言った事はよく言われる。つまり、香港の方が感覚的に独身者が多く、夜遊びや出会いの場も充実しており刺激的で楽しめる場所である一方で、シンガポールはナイトスポットは香港より貧弱だが緑が多く空気もきれいで治安も良くて教育インフラも充実しているためファミリー向けだと。筆者は香港で勤務した事がないので両方を比較した上で意見を述べる事は出来ないが、確かにまあこう言う面はあるのかも知れないな、とは思ったりもする。

例えば、シンガポールに住んでいる日本人は、既婚者が多いように感じる。つまりは、男の立場から「おおっあの女性美人じゃね?日本人?」と思ってもいわゆる「駐妻」のケースが少なからずあり、女性の立場から「おおっあの人日本人かな?イケメンじゃね?」と思っても駐在員の妻帯者であるケースが多いように思われる、と言った事が挙げられる(上に書いた通り、シンガポールの日本人内で不倫劇等をやると、狭い世間で大変面倒な事になるので筆者としてはお勧めしない。各自の自己責任で。)。

更には、独身であった場合でも日本企業の駐在員としてシンガポールに赴任している人の比率が高いため、せっかく出会いがあっても短期間で日本に帰国してしまうと言ったイシューもある。投資ユニバース、ならぬ異性とのお付き合いユニバースを日本人に限定した場合、こう言ったイシューに直面する事は少なくないように思われるのである。

その一方で、既婚者・子供持ちの人のシンガポールに対する感想は総じて明るい。教育費が高いのはネックだが教育自体は充実しているし自然と英・中・日のトリリンガル環境で育てられる、家政婦も安く雇える、ママ友も出来る、子供の急病等の際も日本語で医療が受けられるので安心、治安も良いし緑も多いし、等等と言った所である。

つまり、香港とシンガポールを明瞭に比較分析した訳ではないが、シンガポールに2年間、独身男として滞在してみた感覚としては、確かに「シンガポールはややファミリー向きかも知れないな」と感じる要素はあると言う事である。

まあ、そうは言っても独身者も出会いが全くない訳ではないし、語学面の制限や向き不向きはあるが恋愛ユニバースをシンガポール人、英語・日本語等も話せるバイリンガル・トリリンガルの中国人、エクスパットでシンガポールに住んでいる欧米人等にまで広げれば選択肢は広がる。また、既婚者で子供も居る場合はシンガポールはかなり恵まれた場所だと考えて良いだろう。この辺もまあ、考え方次第と言った所だろうと思う。


・・・以上、カバー出来ていない論点・ポイントも多くあろうかと思われるし、あくまでも筆者の個人的な感想に過ぎないが、小生が思いつくのは、こんな所だろうか。まあ筆者個人の感想としては、色々善し悪しあるが、全体的に考えてみれば、最初に書いたとおりで非常に気に入っているし、シンガポールと言うのはいわゆる海外の中では一番過ごし易い部類の海外の一つかと思われる。以上ご参考まででした…