2012年5月6日日曜日

○ヘッジファンドキャリア転職編:コンサルからヘッジファンドへの転職は可能か?

さて、今回は題名の件。


とあるかたから、コンサルタントからバイサイドキャリアへのキャリアチェンジ、端的にはヘッジファンドへの転職も含めて考えているのだがそういった事は可能か、といった質問があった。大変丁寧に質問頂いて居た事もあるし、これについては思う所もちょうどあった。こういった事もあり、今回はその時の回答をもとに「コンサル→ヘッジファンドへの転職は可能か否か」と言ったトピックについて筆者の思うところを書いてみようと思う。




○結論から言うと、コンサル→いきなりヘッジファンドは厳しい。


 端的に言えば、戦略コンサルから直接ヘッジファンドと言う進路は、殆どないと思う。また、仮に何かの偶然等で転職できたとしても、恐らく活躍するのは難しいと思う。当人にとっても居心地が良いだろうとも思えないし、折角順調なキャリアなのにそれが台無しになる可能性も高い。結論としては、コンサル→HFと言う進路は殆どないし、お勧めしづらいと言う事になる。




○なぜコンサルからヘッジファンドへの転職は厳しいのか:3つの理由。


以下に、コンサル→HFが厳しい理由を紹介する。


1、スキルセットの噛み合わなさ。


理由としてこれが一番大きい。必要なスキルセットが噛み合わない事が挙げられる。


コンサル経由で市場関連の仕事となると、株のアナリストと言う所が一番近いと思われる(債券・為替・仕組み債他の運用となると、もう完全にコンサルとは別世界になってしまう。株ならば市場分析・企業分析等の観点からコンサルからジョブチェンジが可能ではと考えるのが一般的だろう)。しかし、コンサル→ヘッジファンドで株アナリスト、と言う一番距離感の近そうなキャリアステップを考えてみても、実際の所は両者で必要とされるスキルセットが殆どかみ合わない、と言う事である。


ヘッジファンドで必要なスキルセットは、株でアナリスト採用の場合は、(ヘッジファンドの仕事は詰まる所利益を出す事に尽きるのだが)キャリアカウンセリング風に多少かっちょよく言えば、「主に会計とコーポレートファイナンス等を中心とした株式分析」となる。


具体的には市場分析、同業他社分析他、取材等定性的なものも踏まえてDCF等(あるいは必要に応じてPER、PBR他も使って)バリュエーションに落として売買判断出来る事が基本動作として必須となる。またそれだけでは株価は当たらないので、マクロ経済を理解して株価の関係を読めたり、証券市場の需給等も読める必要がある。更にはヘッジファンドだと、調査も「応用編」と言えばよいだろうか、いわゆる産業分析〜DCF等Valuationと言ったオーソドックスなアナリスト風の調査で無い事も多い(短期の株価を取るための事だけをひたすらする事等も多く、やや特殊)。アナリスト的な基本動作は身につけた上で、それを市場で比較的短いタイムホライゾンでリターンを上げると言う活動によりフォーカスした形にアレンジしてゆく必要もあるのである。


そんな訳で、コンサルティングで身につけられると思われるようなスキル、例えばMECEなロジカルな分析、プレゼンスキル、議論を上手くやるスキル等は恐らく全く活かせないと思われる。また、産業分析や競合他社比較等のスキルはコンサルで身につけられるかも知れないが、リサーチもコンサルのそれと、株価を読むためのそれは感覚的にかなり異なる。上記の通り株価を手早く捉える勘どころと言うのがあり、これを掴むのに時間がかかるだろうと思う。


更にはアナリストでなくトレーダー・ファンドマネジャーの場合、プロダクトが株以外になってしまうと更に全く別世界で、コンサルと被る要素は殆どないだろうと思われる。




2、試行錯誤して成長出来ると言う余裕の少なさ。



第二に、ヘッジファンドでは試行錯誤する余裕がなく、スキルセットの違いを埋める余裕がない事が挙げられる。


上記の通りコンサルとヘッジファンドでは(一番近そうな株アナリストのポジションでさえ)スキルセットがかなり異なるので試行錯誤の時間が要ると思われる。


しかしヘッジファンドでは収益貢献出来なかったりファンドの解約など外部・会社環境の悪化で直ぐクビになる可能性も高く、試行錯誤している余裕が中々なく、経験曲線が効いてくる前にタイムアウトになる可能性が高いと思われる。つまりヘッジファンド屋風に言えば、賭け的に不利なBetにならざるを得ないかなと言う面があるのである。この点もあり余りお勧め出来ないと筆者が考える理由である。




3、実際の事例より。


第三には、実際戦略コンサル大手から運用業界に来た人を何人かキャリアの中で見て来た実際の事例から、「余りお勧め出来ない」と言うのもある。大手の外資系コンサルでコンサルタントとしては十分な実績のある人が、ヘッジファンドも含めた運用業界に転職してきても、得てして幸せなキャリアになって居ない事も上記結論に繋がっているのである。これはコンサルとヘッジファンドがどちらがより高位な仕事か否か云々の問題ではなく、上記の通り求められる資質やスキルセットの違いによるものと思う。


コンサルタントとしてはきちんとしたキャリアを築いて来た人が、PERのEを予想でなく実績にしてしまっていたり、DCFも作れなかったり、あるいは知識面はMBAや独学等で身に着けていても何となしに知識が表層的であったり実務で要求される勘所から外れていたり、株価でリターンを取る方のセンス・フィーリングが中々涵養されずだったりして、業界2-3年目位の若手にお荷物扱いされた挙句結局よく分からないキャリアに弾き出されてしまったりと言った事例を過去に見てきた経緯がある。


まあ実務経験がない訳だし、知識面も知らないものは仕方ないし元々知的水準の高い人がコンサルをする訳であるからこれが能力値の高低を判断する材料にはならないとは思う。しかし、周囲も新卒ジュニアなら気軽に知識不足を指摘・レクチャー出来ても、ある程度シニアな人で、しかも知的水準は元々高いと思われる人がこう言う感じだと、周囲もどう接すれば良いか困ってしまうと言う面は結構あるように思う。




○それでもコンサルからマーケット関連職を得たい場合:筆者の思い浮かぶ範囲で3つの選択肢。



以上、コンサルタントからヘッジファンドと言うのは余りお勧め出来ないと言う結論になる。とは言え、どうしても投資・トレードの仕事に行きたい場合、以下のような選択肢が考えられるかと思う。




1、外資系ロングオンリーの大手等でバイサイドアナリストになる。それからヘッジファンドに行くかどうかは考える。


筆者的には可能であればこの辺の進路が一番コンサル(あるいはMBA新卒辺り)からマーケット関連職に移るには無理がないかなとは思う。その後ヘッジファンドが良いと思うのであればそちらへの転職を考える、と言ったステップである。


こう言う会社であれば、社内にある程度のvaluationのマニュアル・テンプレなどあるだろうし、セルサイドアナリストのリソースも豊富に使えるため、彼らに教えて貰ってキャッチアップする事が可能である。リサーチの方法論も、ヘッジファンドと比べればだいぶ「いわゆるど真ん中の産業分析、企業分析、Valuation」と言った基本動作に近いであろうと言った面もある。まあ外資系バイサイドも昨今人をよく切るが、それでも大概は二年位は猶予があるだろうし、ヘッジファンドよりはだいぶマシと言うか試行錯誤の余地があるように思う。


因みに日系バイサイドは各種都合により余りお勧めはしない。理由の一例としては、例えば日系だと銀行・保険・証券会社等の系列運用会社が多い訳だが、これらだと本体からお偉い様がたが降って来るので転職組の出世の余地も(いかに一流どころの外資コンサル等の出身であろうと)余りないと思われ、立派なキャリアを歩んで来た人ほどこう言った処遇に耐えられないのではないか、と言った点が挙げられる。


一方で日系バイサイドのメリットはと言えば一回入れば解雇リスクが低い事、セルサイドアナリストのリソースは相当使い放題なのでこちらから吸収が可能な面もある。日系にするなら大手でかつ2-3年の学習期間と割り切ればそれもありかなあとも思わなくもないが、筆者は日系バイサイドのキャリア構築には余り詳しくはない。この辺は各自の自己責任でお願いしたい。






2、セルサイドアナリストになり、その後ヘッジファンドに行くかどうかは考える。


コンサルタントとしてずっと手掛けてきた得意な業界等在る場合、業界知識、プレゼンスキル等を用いてこちらにいき、バリュエーションや株式分析のいろはを身につけると言った事も考えられる。セルサイドアナリストを経てヘッジファンドのアナリスト・運用者、と言うのは比較的よくあるキャリアステップではある。


但し誰もDCFの作り方やバイサイド顧客に響くような株式分析のいろは等教えてくれないし、大変に生き残り競争も激しいし、既に各セクターに名の知れた大御所が居る中で独自性を発揮しながらランキング等で上位に食い込んでプレゼンスを発揮するのは傍目に相当しんどそうである。茨の道の覚悟は要るだろうとは思う。




 3、ヘッジファンドならアクティビストファンドを狙う。


これは先にブログにも書いた通り、昨今アクティビストは往時の全盛感はなく、余り求人がないかも知れない。とは言えヘッドハンターに問い合わせてみる価値はあるかもしれない選択肢である。


アクティビスト系ファンドから求人があり、コンサル出身であり株式価値評価・株式分析等が現状専門ではない事を先方が理解した上で、企業へのバリューアップ提案のプレゼン作り等から先ずは貢献しながらDCF等は社内で学んだり独学でキャッチアップすればよい、と言ったオファーがあれば考えても良いだろう。アクティビストの場合、比較的コンサル出身のアナリストも少なくないように思う。


しかし繰り返しになるが、いわゆる普通の比較的短期のマーケットでの運用の類のヘッジファンドはコンサルからではスキルセット的に厳しいので筆者からは勧めない。企業への提案行為もあり時間軸も長く、コンサルと親和性が少ないにせよ多少はあるアクティビストに限る、と言った所である。


 
○その他:キャリアチェンジは早いうちに&昨今の労働市場は中々楽ではないかも知れない。
 
さて、つらつらと書いて来たが、最後に幾らかその他のトピックについて述べて終わりとしたい。
 
まず、これはコンサルからマーケット関連職に限らずの話だが、一般論としてキャリアチェンジはするなら早い方がいいように思う。筆者の感覚的にはぎりぎり30歳位までだろうか。
 
20代で試行錯誤して、30歳でこの道で行くと決めてキャリアチェンジして、2-3年でスキルセットの違いに順応し、35歳位でキャリアチェンジした先で実績を出す、と言う位の時間軸で行くと、まあこの位がぎりぎりかなあと言った所である。確か運用業界の転職の大御所、山崎元氏はキャリアチェンジのポイントを28歳(社会人5年)辺りで設定していたようにも思う。
 
30歳でキャリアチェンジした場合でも大概はその業界で職歴7-8年位の生え抜きの同年代が既に居るという事になる。キャッチアップするだけでも簡単ではないし、こう言った生え抜きが居る中で自身の独自性を打ち出して付加価値を出す、と言うのは結構エネルギーが要ると思う。それでも30歳位ならエネルギーもあるし何とか可能かなと言った所で、年齢がこれより上になればなるほどキャリアチェンジは不利になるように思う。試行錯誤は出来れば20代のうちにやっておいたほうが良いと思う。
 
その他の事項としては、昨今の金融業界における転職市場の厳しさも指摘しておきたい。業界内で実際にアナリスト・運用者等の職務経験が長くある者でも、昨今の転職市場は厳しいものとなっている。業界外から人材を採用するニーズが、上記3つの選択肢の中でどの程度あるのかについては筆者はあまり自信がない。転職活動をするにしても、長期戦を覚悟する必要はあるかも知れない。
 
・・・と言った所で、今回のトピックに関してはこんな所だろうか。平素どおりの散文になってしまったが、関連するかたには多少なりとも参考になればと思う。

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