2011年5月21日土曜日

Interlude:ヘッジファンドのおじさんのつたない自己満ピアノ発表会 その3


題名の通り。ハイ自己満です。文句ありますか。
と言う訳で、おじさんのミソジの手習いのお次は、Final Fantasy VIIIより「Julia」。Eyes on meをアレンジした曲で、ラグナ様がジュリア嬢の前で足をつるシーンで流れる曲であります。ラグナ様のような微笑ましくてツッコミどころ満載で弄り甲斐がある一方でリーダーシップのある奴と言うのは中々好感が持てる所であります。以前にもエントリ書いてますが、FF8はゲームシステムに欠点を抱えているものの、ストーリーは中々味わい深いものがあります。FF VIIIが昇華されてFF Xに繋がった感がありますな。

(過去のエントリはこちらを参照:)

で、今後のスクエニ9684はどうなるのよと言う話ですが、まあ例により投資判断に係る事は仕事上余り述べないようにしておくものの、筆者個人的にはあんま期待してないですな。

FF14とかクソ過ぎてやる気が起きない(まだ課金出来てないんですかね)。FF 13-2とかFF ヴェルサス13とかも、トレーラーを見ただけですが今の所は厨二ちっくな内容なんではないかとの悪い予感が拭えません。組織が乱れているようでもあります。そもそも、この手の大作主義ゲームの先は明るくない感が否めません。

とは言え筆者個人的には、FF Xを超える大作、その名の通り「Final Fantasy」「最後の夢」を体験してみたいように思う所ではあります。9684の大量買いポジなど持ちながら「これも、いやこれこそが今の最重要の仕事っすー!」と宣いながらクリアするまで1週間位有給取ってゲームに明け暮れると言ったバカ丸出しな事を、させてくれませんかねえスクエニさん、ここはぜひひとつ宜しくお願いします等とこの際呟いておこうと思う。

2011年5月14日土曜日

連絡事項

どうやらBloggerのサーバーあるいはシステムに先日、不具合が生じた様子です。結果、一部のコメントが消去されてしまっているようです。折角コメント頂いたにも関わらずご迷惑をお掛けして恐縮ですが、何卒ご理解賜りますと幸いです。Anonymous Investor

2011年5月13日金曜日

増資発表後の空売り禁止規制について

さて、Twitter上で、「法的手続なしに債権放棄するんじゃ、銀行は東電に貸出できんな」「東電社債も発行封印されてる」「じゃ、増資かwww」みたいな話題で盛り上がった流れで題名の件について呟いたので、増資まわりの話について、掲題の件をまとめておく。


○増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し、と言うヘッジファンドの取引の経済的意味合いについて。

まずは増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し、と言うヘッジファンドの取引の経済的意味合いについて解説しておこう。一見増資銘柄空売りして増資応募で買い戻すヘッジファンドが一体何の付加価値を提供しているのだ?と思われるかも知れない(筆者もそう思って居た)。

しかし、この行為にも一応経済的な意味合いはある。第一にヘッジファンドは増資の際、客寄せパンダとして応募倍率の高騰を演出してロングオンリーの参加を促したり、増資後の売買を活況にする等で市場に流動性を供給している。また、主幹事証券会社1社やロングオンリーで負担し切れない分のリスク負担を分担していると言う面もある。端的に言えば、以前のりそな銀行や新生銀行みたいな銘柄を、主幹事証券はまず在庫として持っておくのは無理であるし、ロングオンリーだってポートフォリオがりそなに新生で過半を占めるみたいなアグレッシボな(?)ポートフォリオを組む事は出来ない。そんな訳で、大小様々のヘッジファンドもリスクテイクの一端を担っている訳である。


○増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し、と言う取引が公正に欠くものなのか?

上記の通り、増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻しの取引には一定の経済的意味合いがある一方で、昨年末に金融庁が、「著しく公正に欠く」と言った理由で、増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻しを禁止する旨を発表した。

ちなみに、今年の頭〜3月の震災前までの間、りそな、ケンウッド、新生銀行、その他中小型株まで含めると多数の銘柄でやったら増資ラッシュ、ラストスパートが続いた。あれは金融庁様の増資発表後ショートセル禁止令が実施される前の駆け込みである。主幹事証券的に(&増資したい企業的にも)ヘッジファンドの参加が激減する前、高倍率の活況な増資に出来るうちにと言う事だったのである。

筆者については、金融庁の「増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し」の規制については、納得が行っていない。もちろん、増資発表前にインサイダー聞いてショートセル、と言うのはインサイダー情報に基づいた行為であり市場の信用・透明性を減じる行為なので禁止されて然るべきである。しかし、開示情報として増資発表の開示がなされた後に、借り株が得られる範囲でやるショートセルが禁止と言うのは、筆者は今もいまいち納得出来ていないのである。

理由は上記の通り、増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し」と言う行為には一定の経済的意味合いがあり、かつ公衆の閲覧可能な公開情報に基づいたフェアな取引だからである。

増資と言うのは株式の希薄化を伴うネガティブな要素なので、その情報を市場で織り込みに行く、と言う段階はやっぱり必要だと思う。また、増資発表後〜増資株式割当の間にヘッジファンドがしっかり空売りして情報を織り込んでくれる事で、ロングオンリーも増資の悪材料が出尽くした後の価格で安心して増資に応募して株を買う事が出来ると言う面があるのである。これが金融庁の規制によって増資発表後のショートセルが禁止になり、増資による悪材料が充分に織り込まれていない状態で投資家が増資に応じないといけないとなると、増資引き受け後もだらだらと株価が下がり続けるリスクを投資家は引き受けないといけない事になる。

つまり、金融庁の増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し」についての規制が実行されると、勿論ショートセルが出来なくなるヘッジファンドの参加は減少するし、それに加えて「自分が増資を引き受けた後も株価がだらだら下がり続ける」と言うリスクをロングオンリーも嫌がる事でロングオンリーの増資応募も減少すると見られるのである。

こうなると、株式市場の重要な機能である、「資金調達機能」は減じる事となり、金融市場の発展、ひいては成長資金を調達しづらくなる企業側の活動・成長の停滞を招く事に繋がると考えられるのである。


○その他付記

但し、増資まわりに関する日本の株式市場の慣習には改善点も勿論ある。例えば日本は増資発表〜価格決定〜株式割当までの期間が長過ぎる。米国で数日でやっているものを、増資発表から何週間もかけて日本はやっている。

しかしアレだ、仮に東電が増資するんだったら、増資銘柄の空売り禁止が金融庁様から発動される前にやってしまわないと、引き受け手が居ないのではないかと思う。

上記の通り、ヘッジファンドは増資銘柄の空売り規制が発動されると参加者が大幅に減るだろう。
一方で、ロングオンリーで東電株買える人はさすがに居ないだろう。顧客に説明が出来ないだろう。

東電様の増資は、増資発表後の空売り禁止規制の前に為されるんだろうかw。
何と言うかもう、お笑いの世界だな日本の金融市場って。。。とても先進国のそれとは思えないと思うのは、恐らく筆者だけではないだろう。

2011年5月12日木曜日

○アナリストJobの変遷 その2

さて、前回の「定量化万歳期」の続きである。


○やってみると分かる、Valuation Model至上主義の限界

今日は題名の件について。
Valuation Model至上主義の顛末について説明したい。

さて、こうした「Valuation至上主義」の隆盛も、長くは続かなかった。理由は簡単だ、運用としてワークしない、端的に言えばMBA出の秀才等を高い給料払って大量動員してDCFを詳細に詰めると言う資本投下が、必ずしもリターンに結びつかないからである。

実際にモデルを作って株式市場と向き合ってみると、DCFモデル(やあらゆるその変形・類似の株式価値評価)には大きな限界がある事が分かる。端的に言えば、「DCF Valuationは説明の道具であって、投資でアルファをもたらせるような道具ではない、”真の株価”を撃ち抜ける等と言うのは単なる幻想でしかない」と言う事が実際に試してみると分かるのである。以下に、幾らか問題点を述べてみる。同業者にしたら当たり前のものばかりで釈迦に説法になってしまい恐縮だが、対象は主に学生さんやエントリーレベルの若手を想定して書いている点を添えておく。


1.変数が多すぎる。

なにしろ変数が多すぎるのである。分子のキャッシュフロー予測については、先のエントリで書いた通り、売上~当期利益予想までの各項目。それに分母の割引率。しかも変数各々について、一定の誤差や範囲が付きまとう。

ここでちょっと考えてみて欲しい。例えば、売上を数量×単価で予測するとする。この際、数量の予測では上下10%位の範囲であれば「論理的に許容出来る妥当な範囲」で、単価の予測でも上下10%の範囲くらいは同様とする。例えば携帯電話の業界の売上予想を作る際に、ARPU(1人当たりの月間平均携帯料金)を、6000円、6600円、5400円で入れても、どれもまあ「こんなもんかなと思う水準だよね」「前提としてそんな破綻したもんじゃないよね」と言った状況を想像してみて欲しい。財務モデルの予測とは、こうして「連結業績」と言うそれだけでは予想がしづらいものを、妥当な範囲が限定できる単価、数量、市場規模、シェア等にブレークダウンして行く過程だと考えると分かりやすい。

ところがどっこい、これらブレークダウン数字を「論理的に許容出来る妥当な範囲」で全部入れた所で、最終的な結果は非常に幅広いレンジを取ることになる。例えば上記の単価×数量の場合、数量×単価で掛け算しているので、非常に大雑把な議論をすれば、上は1.1×1.1=+21%、下は0.9×0.9=-19%位のレンジであれば「論理的に妥当な」予測範囲として受け入れられる。数量×単価の結果としての売上の中心的な予測値が100であれば、81~121の範囲の予測を作成出来てしまうのである。

更に、5年10年先のキャッシュフロー予測を作る過程でこの誤差はどんどん大きくなる。例えば、売上成長率を年率4%で10年続くとすると、当初100だった売上は10年後に148になる。これを3%にすると134、5%にすると163程度になる。比較的安定成熟した商売を想像してみると、年率3%でも年率5%でも、上記の通り単価や数量をちょっと調節すれば説明の付く妥当なものとして作成可能である。それでこれだけブレてしまう。

更には、DCFの予想の最終年度を発射台として、それ以降は「Terminal year」と言って、それ以降は永久的に一定率で成長すると言う前提を置く訳だが、これの式が「CF予測最終年度×(1+成長率)/(割引率-成長率)」である。この部分がValuationへの寄与度が最も大きくなるのだが、上記の通り、CF予測最終年度は「鉛筆なめなめならぬスプレッドシートいじいじ」で例えば134から163まで操作可能で、しかも割引率も成長率も一意に決まるものではなくある程度の範囲を持たせる事が可能なのである。

もっと話を進めよう。上記ではDCF Valuationの分子であるキャッシュフローの誤差について記載したが、分母の割引率だって簡単にスイングする。

株主資本コストについては、計算の弁法として、例えばベータの計算期間を変えたり、マーケットリスクプレミアムをちょっと変えれば、結構な範囲で数字を「作る」事が可能である。

また、マーケットで実際に起こっているのは、信用膨張~収縮の過程で、リスクプレミアムがドラスティックに上下していると言う事である。金融緩和が為され、市中にマネーが溢れ、景気も回復途上にある際には人々がリスクを取りたがり、リスクプレミアムは低下する。これが、例えばリーマンショックや震災等のショックが起きると、人々はリスク回避志向になり、カネ回りは悪くなり、リスクプレミアムが急上昇する。大雑把に考えて、割引率が5%から10%にジャンプすれば、割り算の分母が倍になる訳だからValuationは概ね半分になる。「確固たる真の割引率」なるものがあるのではなく、それはマクロ経済の状況や人々のリスクアペタイトと言う「心理的要因」が大いに関連している、揺れ動いて然るべきものなのである。特に、ボトムアップ一本やりの「ザ・アナリスト」的な人、マクロ経済音痴のアナリストだと、分母の割引率が変動すると言う感覚が不思議な位身に付いていない事が多いように思う。

詰まる所、誤差や範囲が生じざるを得ない「想定・予測」の類いを掛け算したり割り算したりしていく過程で、誤差が増幅していくのである。

そんな訳で、筆者も他のアナリストもそうだが、「買いのValuationを作れ」と言われれば現状の株価よりIntrinsic Valueがかなり上の「現在の株価が割安感に溢れた財務モデル」を作れるし、売りのValuationを作れと言われれば現在の株価が割高のモデルも「論理的に妥当で説明可能な数字として」作れる。M&Aの現場などでは、まず「落とし所となる適正価格」ありきで、それを意識しながら逆算して各々の項目で見ればラインbyラインでソコソコ説明可能なValuationを作ったりもするものである。

詰まる所財務モデルとは、説明の説得力を上げるための弁法と言う要素が強く、これ自体で「真の価値が打ちぬけて、その通り売買すれば儲かる」と言った類のものではないのである。バンカーやセルサイドアナリストはそれで良いと思うが、投資で実際お金を張る側からすれば、「参考程度のもの」であり、意思決定の道具としてはかなりファジーなもののように思う。

言ってみれば、DCFと言うのは科学と言うよりは、数字を使った芸術や文学の類に近い要素がある訳である。細かい減価償却の予想やら、のれん償却のキャピタライズだのオペレーティングリースのキャピタライズだのの会計制度の違いを除去するテクニックを幾ら厳密にやった所で、最後のアウトプットたる「本源価値」はもやーっと曖昧なかなり広い範囲を取るものにならざるを得ないのである。何しろValuationの決定要素の過半を決める「割引率=リスクプレミアム」や「成長率についての人々の期待」は、心理的要素で決まる面もかなり強いのであるから、これ至極「文学的」なのである。

そんな訳で、DCFを金科玉条に掲げて幾らマニアックにモデルを詰めても、バンカーならディール手数料、セルサイドアナリストならアナリストランキング入り等の形で「説得力に対する対価」が得られて報われるかも知れないが、こと相場でリターンが取れてなんぼのバイサイドについては、その活動が必ずしも報われるかと言えば、そうは行かないのである(注)。

・・・1を書いただけで随分長くなったので、他の問題点についてはまたの機会に・・・。


(以下注釈)

(注)しかしあまりDCFを馬鹿にし過ぎてもかわいそうなのでまあ何歩か譲ってDCFを投資で使える局面も書いておく。

1.財務モデルを作成する過程で、調査先の業界や企業に詳しくなれる。

PL、BS、CFを予測する過程で、例えば業界の市場規模、シェア、今後の見通し、その会社のコスト構造、設備投資が必要な産業か既にキャッシュ回収期なのか、今後キャッシュが余るか不足するか(=増資等が起き易いか自己株買いや配当が起き易いか)、等等について自然と考えるきっかけが出来る。アナリスト初心者でも財務モデルを例えば1業種の同業数社で作成してみる過程で、自然とその業界の構造や特徴等が見えて来ると言う面はある。その業種や企業に詳しくなる事自体は、投資判断の上で有用であるし、無駄ではない。但し、知識量と相場でのリターンが正比例するかと言うと、そうでもない。やたらマニアックな事まで業種や会社に詳しいけど全然株価当たらないアナリスト、と言うのは結構良くあるパターンである。この点は留意が必要である。


2.株価のバブルや恐慌時の常識チェックの際には使える面もある。

つまりバブルの際は、DCFで計算するとバブリーな株価を正当化するには毎年二桁成長が永久に続く必要がある、と言った具合になる。世界のGDP成長率が概ね数%前半~中盤なので、これだとこの会社1社がどこかの段階で地球中の富全部より大きな価値を持つ事になってしまう。これはおかしいなとか。

こういう時は一時的にリターンが周囲より冴えなくなる覚悟を取って、お祭り騒ぎから離脱しないといけない。(但しこう言う時にショートはお勧めしない。お祭り騒ぎは存外長続きする可能性があるからだ。ITバブルの時にソロスやタイガーマネジメント等の有力運用者がこれで苦しんだ。Valuationが高過ぎると言うのはそれ単体でロングポジションから離脱する理由にはなるが、それ単体でショートをする理由にはならない。)

あるいは恐慌の時に「どう保守的に予想して割引率を10%とか15%とかで入れても今の株価は割安だな、未公開株・PE投資ならともかく上場株の割引率が15%と言うのは皆さんリスク回避しすぎでしょう」とか。

但しこういう局面の場合は、詳細なDCFモデルなんて回さなくても、単純な常識チェックで高いとか安すぎるとか言うのは分かると言ってしまえばそこまでである。ハッキリ言って、ロングオンリーのバイサイドに、財務モデル作成とアップデートのために業種ごとにアナリストを大量配置しておくべき必要性など、ロングオンリー側に居た事もある筆者からすると、殆ど感じない。単に年金コンサル向けに「弊社はこんなにアナリストを張り付けていて云々」と説明するための飾り、方便位のもののように思う。感覚的には、業種別でバイサイドでアナリストを配置するなら、「テックな人」「消費材・内需系の人」「自動車とか資本財とかの人」「Special Situation、中小型株、投資テーマその他の人」位の大雑把な分類で何人か配置して、セルサイドの情報も貰いながら効率的に動けばそれで充分なように思う。何度か書いたようにも思うが、日株ロングオンリーのバイサイドアナリストと言う分野は、年金も取り崩しで運用会社の売上が伸びる要素もなく日本株の調査運用ニーズが劇的に増える事も考えづらいと言う中で、今後人材の淘汰が進んで行くと思う。

話を戻すと、上記のようにバブルのお祭り騒ぎから脱出したり、バーゲンハントしたり出来るか否かと言うのは、DCF等のモデリングの「知識」の有無の勝負と言うよりは、人間としての「規律とか胆力」、不況期においては「その時点でリスク取れる余剰キャッシュを手許に持ってるか(でもってこれはバブル崩壊前に規律を持って離脱していないと確保されないのである)」の有無の勝負の面も強いように思う。

結局、投資運用と言う商売は最後はどこまでも属人的な面が残ってしまうもののように思う。DCFモデルの作り方にせよ、バフェットやソロスの投資・投機プロセスなりフレームワークは色々な書籍で公開されている。それを「知る」のは第一歩として重要なことだが、それを知っていれば誰でもバフェットやソロスになれる訳ではないのである。

筆者の過去の幾つか転々とした運用会社の勤務先でも、DCFのお授業的なものだとか、バフェットやソロスの書籍で勉強会をするなどと言った活動は行われていた会社はあった。まあ平均レベルの底上げのためにこういうのは必要なのかも知れない。しかし今振り返ると効果は芳しくはなかった。

先ずDCFの所でつっかえたりだとか、ソロスの本程度で「哲学的で難しすぎる」等と言う人が(一般人でなく同業者で)居る事には驚いた。つまりこの手合いは「知る」段階から脱落である。

更には、頭では理解できても、安月給のサラリー貰ってダメならくびになる訳でもなく成功すればひと財産築ける訳でもなくまったりやっているようでは、投資・投機に必要な「規律と胆力」は育たなかったように思う。会社入って30年ローン組んで家買って飲み屋で同僚と会社の愚痴でくだまいて、社内での評価上げるために格好付けで勉強会なぞやったり出たりなんかしてみてみたいなサラリーマンマインドと、投資・投機と言うのは相容れない類のものだ。

第一そこには人生の重みがかかっていない。投資・投機はもっと真剣なものだ。まあ物理的な戦争でなくマネーを媒介としたエネルギーの概念的なぶつかり合いに参加すると言う事だし、普通の人は孫正義氏のようにはいかないだろうから命まで賭けなくていいが、せめて進路、生活のありよう位かかってないと、ただのバーチャファイターの類で、全然真剣さが出て来ないのである。

運用組織を強くするには、(運用を良く知らない日系運用会社のマネジメントや年金コンサルのお好きな)組織体制だの勉強会だの言った表面的な事では上手く行かないのである。調査運用担当者の人間性、規律と胆力自体が相場、実弾のマネーに揉まれて磨かれるような場こそが必要であると思う。

言ってみれば、ガンダムの主人公のように、

「ある日民間人がぽっと戦場(=マーケット)に出くわし」
「何か知らんけどモビルスーツ(=マネー)と言う強力な力を自分のフリーハンドで扱う権限と責任を与えられ」
「実際に戦場(=運用の現場)に出てこれが戦争(=自身の進退のかかった場所)だと言う厳しい現実を突きつけられ」
「引きこもりがちな少年は大人に成長してゆくのであった」

、、、と言う状況を、楽ではないけど全く不可能でもない適度な難易度・負荷量(=最初は対ザク戦から。ニュータイプ強化人間みたいに心身壊れてしまったりしない範疇)で作る必要があるのである。ドラクエで言えば、ルイーダの酒場でグダグダ言ってないで冒険に出る状況を、適度な難易度で(最初はスライム・ドラキーから、最初は少額の運用やそれに関するリサーチから)作る必要があるとでも言おうか。

しかしそうなると、大手の運用会社がやっているような、ファンマネ、アナリスト、バイサイドトレーダー、と言ったトヨタ的な工程別流れ作業よりも、ハーレーダビッドソンのような(あるいはガンダムのパイロットやプロップやヘッジファンドのような)、権限・責任が完結しているセル生産の方が向くようにも思うのだが、規制対応上無理やりバイサイドトレーダーと言った職種が出来て今の大手ロングオンリーの分業体制が出来ている経緯もあるので、多分大手ロングオンリーの状況はそう簡単には改善しないとも思ったりもする。大手ロングオンリーの調査運用執行分業体制と言うのは、言ってみれば1機のガンダムを操舵、攻撃、防御等機能ごとに複数人で足を引っ張り合い責任のなすり付け合いをしながら操縦しているようなもので、非常に効率が良くないのである(そうしているうちに簡単に撃墜されてしまうのである)。

更には、報酬体系や人事制度などを「実弾のマネーに揉まれて人間性、規律と胆力が磨かれる」形にするのは、多くの大手運用組織では中々無理な気もするのであった。

・・・って、DCFの注記から随分話がそれてしまった。この辺の話を書くと、幾らでもながーい注記になってしまうので、この辺にしておこうと思う。

2011年5月10日火曜日

たまには金融系の話で:アナリストJobの変遷(たぶん)その1

昨今さっぱりBlogのまともな更新が無かった。しかも元々は、後進の若手等に多少でも貢献できればと言う趣旨で書いていたブログなのに最近は殆どInformativeなエントリーを書いていなかった。グダグダした事をTwitterで呟くのが昨今の筆者のWeb活動の太宗になってしまい、微妙に反省している(しかしたいそう反省している訳ではない)。

そんな訳で、たまには学生さん~エントリーレベルのかた向けの金融関連の内容を書いてみようと思う。

○アナリストJobの変遷

今回は、恐らく何回かに分けて、題名の件、筆者の通算10ん?年のこの業界での株式アナリストJobの変遷について参考までに書いてみようと思う。時代は概ね90s後半〜2000年代初頭から始まる。これより以前の事については、もう少しシニアなかた(40s)の同業者に聞いて頂けると幸いである。

こう言った変遷を知っておく事で、学生さんやエントリーレベルの若手のかたにおいては、シニアと会話を合わせ易くなるかも知れないし、先人が通って来た試行錯誤をダイジェストで先に知っておく事で、試行錯誤を多少ショートカット出来る面もあるかも知れない。とは言えまあ参考程度の拙文ではあるが、興味のあられるかたはお付き合い頂ければ幸いである。


○まずは「定量化万歳期」から。

筆者がこの業界に入った頃(細かい所は伏せておくが概ね90s後半〜2000年代初め)は、90年代より徐々に日本の運用会社・バイサイドでもアナリストを雇うようになり、90年代の末頃にはバイサイドアナリストは既に職種として確立していたが質にはまだまだ恐らくバラツキがあった頃、概ねこんな位置づけの時期だ。

この頃、日本でもDCFモデルによる株式Valuationが徐々に勃興しつつあり、マニアックなモデルを作れると言う事はある意味誇りみたいな文化が確立しつつあった。つまりは、定量化万歳、モデル万歳、より詳細にモデリングをする事で、ここをいい加減にやっている市場参加者よりもアルファが取れるのではないか、差別化が効くのではないか、と言った事が志向されていたのである。

そんな訳で、筆者が新卒で入った某外資系バイサイドアナリスト職においては、DCFやその応用としてのDDM等の、キャッシュフロー予測に基づいたValuation Model、財務モデルの学習と言うのが入り口の重要な部分であった。


○財務モデルって?

モデルと言うのは大雑把に言えば、PL、BS、CF計算書を整合性を持ちながら予測して、大概はCAPMの教えに基づいて資本コストを計算して、現在価値に割り引く。でもってその株式の本源的価値、Intrinsic Valueを算出して、それより市場の株価が安ければ買い、高くなったら売ろう的な、まあこう言うものである。

売上は地域別や事業別にブレークダウンし、それを更に売上×マーケットシェアや単価×数量にミンチ肉のように、いやコンサル風に格好良く言うとMECEに分解し、予測を積み上げ、全体の売上予測をする。市況品が売上の場合は、例えば石油価格だの半導体価格だのの想定だのも作ったり、その想定を作るために将来の需給バランスの想定まで作ったりする。大体はまあ、数量×単価や市場規模(パイの全体の大きさ)×そのシェア・比率、そのちょっとした応用でブレークダウンしていく事で作成する。これだけで膨大なスプレッドシート数になったりもする。この作成過程で、調査セクターや企業についてそれなりのオタクになる事が出来る。

コストも固定費や変動費に分解したり、費目ごとに例えば人件費であれば想定社員数×1人当たり人件費等、これまた単価×数量や売上に対する%等で昨今話題のユッケの肉のように切り刻んでコスト予測を行う。減価償却費が定率法の場合はいちいち設備投資額の想定、既存資産、平均耐用年数等をスプレッドシートに入れていって定率法のカーブを適用して減価償却費の予測を行う。

営業利益以下でも、例えば金利の支払いについて将来の設備投資予想やらも踏まえた借り入れニーズまで予想して、更には金利の想定まで置いて予想を行う。特損についても、例えば小売のように店舗のスクラップが定常的になされる場合など予測可能なものというのはあり、こういった費目については出店・閉店の計画予想を作ったうえで店舗当たりの閉店コストを過去実績等から想定して予想を作る事が出来る。これでやっとPLの予想の完了だ。

更にはB/Sの予測も行う。売掛金や在庫の推移。売上予測の一定率と言った形で取ることが多いが、例えばヒアリングの結果、積極的な在庫削減策や運転資金の改善策を取っていて将来改善が予想される際はそれも反映する。後は上述の通り設備投資や減価償却の予想を作る事で固定資産の予想もする。負債側も、借り入れ・資本調達ニーズ等を反映させる。

そして、キャッシュフロー計算書の予測だ。PL、BSの予想が出来る事で、当期利益・運転資金増減等などで営業CFの予測が作られ、設備投資予想で投資CFの予測が作られ、残りがFCFだ。借り入れ返済を先にやって、更に残りが株主に属する配当。

で、これを作ってみるとわかるがPLとBSとCFはばらばらに成り立っているのではなく全部体系的に繋がっており、それをエクセルのスプレッドシートに落とし込むと関数が循環参照する事になる。これをExcelの自動繰り返し計算100回とかで設定しておけば値が収束するのである。随分な凝りようだ。でもって、その「歪み・残余」については、この商売やっているかたでないと分からないかも知れないが「Excess Cash」と言う費目で吸収する。これにより、その企業がキャッシュバーンするのか、キャッシュ余りになり株主還元の余地が増えるのかがわかるのである。このほか、例えばオペレーティングリースをキャピタライズしてみたり、企業ごとの会計制度の違いがValuationの差に出てしまわないように各種調整を施したりもする。まあ取り敢えず、1社評価するのに随分な凝りようである。ヘッジファンドでびゅんびゅんやっている今の筆者がこれを調査ごとに全部やったら1日が100時間位あっても足りないだろう。

で、キャッシュフローの予測が出来たら、次は割引率の想定である。CAPMの経典の通りにリスクフリーレートとベータを取って株主資本コストを出したりする。負債側は概ねその会社の借入返済の過去何年かの平均利率を取ったり直近の利率を取ったりする。

こういう予想を巨大なスプレッドシートを作成して延々作りこみ、更には外資系運用会社の場合だとグローバルにアナリストを配置して皆同一のフレームワークの元で世界の主要企業のヴァリュエーションを算出した先に、その企業の「本源価値」を算出する事が可能で、株式の割安割高が発見可能で、アルファがあると、当時信じられていたようなきらいが「アナリスト村」にはあったように思う。MBAのコーポレートファイナンスやValuationのお授業を、純朴に株式運用に適用したような感じだ。

とはいえ当時では日本語でValuationについてExcelのスプレッドシートレベルまで詳細に記載した書籍が巷に殆どなかった。エクセルだってWin95が出てから広く使用されるようになった案配だったように記憶しているし、洗練されたスプレッドシート作りのTip等も今程は普及して居なかった。従って、日本人でDCFのモデル作成が出来る人間と言うのはアナリストとしてそれなりに付加価値たり得たのである。こういうのが流行った時代、DCFのValuationが作れる事がアナリストとして差別化要素だった時代と言うのがあったのである。

筆者も最初に入った外資系運用会社で、上述のような事を事細かに記載してある英語で100ページ以上の「Valuation Manual」をポンと手渡され、じゃあ直ぐに作れるようになっといてね等と言われたものだ。このマニュアルを見ながら、上司のシニアアナリストが作成した巨大なValuationモデルのメンテナンスを行ったり、夜分にExcelの巨大なスプレッドシートのリンク、リンクのリンク、またリンク、IFの入れ子だのVLOOKUPだのと言ったのを辿って行って研究したりする中で、OJTで自分でもスクラッチから作成出来るようにしていった訳である。まあ、入り口でアナリストの基本動作としてこう言うのをキチンと学べたのは有難かったように思う。MBAで習う事を給料貰って仕事しながら学べたと言う点においても悪くはなかった体験である。現在においても、株の調査だとかコーポレートファイナンス系の職種をするのであれば、入り口としてこう言うのは経ておいて良いとは思う。昨今は日本語のテキストも沢山ある(末尾に参考書籍を記載)。

こうやって書いているといやーお疲れなこったなぁと今となると思うものだが、こんな時代もあった訳である。長くなってしまったので、続きはまたの機会にでも・・・。


(付記:参考書籍)