2010年9月30日木曜日

四季報500本ノック:高配当利回り株が非常に目立つ。

evernoteへの取り込み自体は終わったので、次は銘柄データベースへのタグ付けである。

これがまた、中々の面倒な曲者である。掲題の通り、1社1社、その当時のノート、あとは四季報(こちらはiPhoneに入れてある最新版)を見て行って、どう言った投資テーマなりポイントなりでその銘柄を見れば良いのかをタグ付けして行く訳である。項目は、時価総額別、業種別、内需か外需か(円高恩恵型か円安恩恵型か。マクロビューを入れながらの運用では非常に重要)、果ては主幹事や監査法人が微妙な所か否か等、諸々ある。

そんな訳で結局の所、四季報を逐一見て行く事になり、データベースに入って居る銘柄数がのべ500銘柄以上有るので、題名の通り、500本ノックになる。仕事をしていた時は、四季報の時期になると、ある程度流動性のある銘柄については一通り目を通すのは大切な基本動作・仕事であり、500本ノックではなく概ね1000本ノックになる。昨今、こう言う体育会系な教育手法を取る運用会社もだいぶ減ってしまったようにも思うが、やはり四季報めくりは基本である事を実感する。色々発見がある。

まだ銘柄チェックの序盤だが、この段階で気づいた点について、今日は題名の通りで一点。


○気づいたら、日本株は高配当利回り株で溢れていた。

この点は、少しチェックしているだけで結構目立った。10年ものの国債利回りが概ね1%である事に対して、比較的時価総額や流動性の確保出来る銘柄でも配当利回りが3%、流動性の面で多少犠牲を払って小型株に目をやれば、配当利回り4%とか5%近くある銘柄も散見される。

しかも、その中には「キャッシュフローも比較的安定しているビジネスで、どう見ても減配リスクのなさそうな銘柄」も少なからず見られる。

利回り4%や5%なんて大した事ない、と仰るかたも居るだろう。しかし、ヘッジファンド屋をしていた頃の感覚で行くと、「減配リスクのない4%や5%の配当利回りの株」は、精神的にかなり助かる資金の退避先である。

なぜか。ヘッジファンド屋に求められるのは、「年率二桁リターンをリスクを抑えながら安定して出す事」である事を考えれば、「取り敢えずこれで5%リターン確保」と言った投資先は、心理的な安心感としては非常に優れた資金の退避先のように思うからである。「資金の一部を当座はこう言った”アンパイで利回り5%(税金の議論はここでは除外)を取れる所”で固めておいて、もっと良いネタが出て来た時にそちらに資金をシフトする」と言うのと、「昨今のようなチョッピーで方向感のないマーケットのもとで、ゼロから優良なトレーディングネタを探して10%に到達させる」と言うのでは、心理的な負担感がだいぶ異なるように思うのである。

こう言う相場付きの時期に限って、もの凄いハッスルしてびゅんびゅんトレードしても行ったり来たりで、大変疲れるけれども大して儲からん、と言う事になるケースも多いものである。ああ、何だか筆者がそうだったみたいではないか(そう言う事も大いにあった事は否定しません、ハイ・爆)。日銭稼ぎのためにトレードを繰り返して、働けど働けど一進一退、となり得る事を考えると、日銭についてはインカムゲインで割り切って、大きな魚(直近の武富士のショートのような・・・結構前から、業種内で”独りアンダーパフォーム”していたので、おおー誰か投げとるな、売り続けてるな、と言う感じがしていたのだが、遂に来たと言う感じ。ああ言うのをショートで仕留めるのは、ヘッジファンド冥利に尽きる話である)を探す事に集中する、と言うのも一法と言う事である。

ジム・クレーマーも最近来配当利回り株推奨はしているし、ソロスも「米国債利回り<米国優良企業の配当利回り、と言った状況は異常だ」と述べている。全部を配当利回り株で固めてしまっては年率二桁リターンは行かないが、精神的に余裕を持ちながら相場に当たる事を考えると、減配リスクが少ない配当利回り株でポートの一部を固めておいて、一方でもっとspeculativeでボルがあり、キャピタルゲインの取れそうな良い投資/トレードアイデア生成に専念する、と言った当面の戦略は、面白みは勿論無いのだが、悪くないだろう。

但し、流動性のない銘柄は、買う時点、売る時点でのマーケットインパクトを考慮すると実質はもっと配当利回りが低くなる、と言った面もあるので、ファンドのサイズと流動性のバランス感、購入時/売却時のマーケットインパクトには要注意である。筆者の大雑把な基準感では、概ね日々の平均出来高の3割以内の関与で10営業日までに希望する分量だけ購入/売却出来る、位の銘柄だったら、発注時にインパクトをかけないように気をつけつつ、ちょこちょことこの手の銘柄に触手を伸ばすような戦略を取るのではないかと思う。

また、言うまでもないが、この手の戦略を取る場合は、下方修正や減配等のアクシデントに捕まってしまい、配当利回りを大きく超えるようなキャピタルロスをかましてしまう、と言うのが一番の「良くある失敗例」である。こう言う事にならないように、業績やキャッシュフローに安定感のある銘柄に的を絞るように気をつけるべきである点も付記しておく。

2010年9月29日水曜日

終わった・・・

やっとこ、銘柄のノート以外の投資アイデアのメモ等等含めて、全ての過去のノートをevernoteに吸い込めた・・・既に今月分の500Mのevernote容量も、半分以上使ってしまった。9月中に終えるのが目標だったので、ぎりぎりだ。。。これにて、過去の棚卸し終了である。一区切り付いたな。。。それにしても今後は、最初からevernoteでノートやメモも書いて、スケジュールやToDoも全部電子で管理しようと誓う筆者であった。

2010年9月26日日曜日

のべ548銘柄分・・・(そして日株についてふと思う事)

のべ548銘柄分の昔のノートがevernoteに取り込まれ、筆者の過去取材データベースとなった。限られた取材ノートしか手許に残していなかったので、実際の取材実績量の恐らく半分にも満たない形になってしまった点は非常に残念。しかしそれでも、ノートを見返すと、ああそうそう、この銘柄取材したっけな、あんな銘柄だった、と浮かぶ状態の完全自分仕様のデータベースが出来た訳で、一方で機関投資家が投資可能なユニバースは約1000-1500銘柄程度である事を考えると、分随分心強い道具になってくれそうである。

後はこれに、業種、時価総額などの銘柄特性、ベットする要素(これは企業秘密なので詳細には言えないが、調査する際には「ここのポイントにbet出来るかも知れない/したい」と言った仮説を持って取材をするものである)、等でタグ付けをすれば、更に使い易いものになりそうである。今後の相場展開で、同じ要素にBetしたい状況になった際は、端的に活用が可能だ。こう言う反応力が上がるのは、非常に大事な事だ。


○ふと思う事。

しかし、こうやって見ると、日本株については、概ね「アナリストとしての銘柄探しの旅」は一周やってしまったんだなーと痛感する。

出来れば、「日本株に詳しくなった、ボトムアップの調査を沢山やって来ました」と言うエッジを活用しつつも新たな稼ぎのフロンティアに進出したいし、する必要がある事を最近実感する。

理由は、日本株オンリーのボトムアップリサーチ需要自体は、今後多くは期待出来ないだろうからだ。

元々は日本企業自体が世界におけるプレゼンスの高い主要産業が数多くあったし、上場している日本株は、その銘柄の数(4000銘柄弱)、業種の幅の広さ(概ねどんな業種でも上場している)、流動性(元々は米国株に次ぐ時価総額規模と流動性があった)、どれを取ってもグローバルに見ても充実した市場であった。従って、日本にアナリストを配置して日本株を調べる事に対するニーズは高いものがあった。日本株のアナリストと言う職種で雇用が過去大量にあったのは、こう言った環境面の恩恵もかなり大きかったように思う。

一方で、昨今だと、上位のような日本株の優位性が失われて来ている。以下、関係者はげんなりするかも知れないが、幾つか状況を列挙してみる。


・実質的な銘柄数は見た目よりも現在は少ない。

上場銘柄数は今だ3800銘柄あるものの、IPOが減る一方で上場廃止銘柄も多いためその数は減っている。筆者的には、上場している意義が感じられない銘柄もまだまだ多数あるように思う事を考えると、四季報の厚さは長期的には最終的に半分位になっても全然おかしくないようにも思う。また、何度か指摘しているかも知れないが、流動性の乏しくなった現在の状況のもとで機関投資家が投資可能な銘柄ユニバースは、かなり中小型株もやって良い会社でも実質として1000銘柄ソコソコ程度と思う。つまり、見た目程日本株内でストックピッキングで差別化する選択肢は無いのである。


・流動性の枯渇も深刻である。

流動性は厳しい事この上なく、往時より大幅に薄いものになってしまった。昔は東証の売買代金が1日で3兆円程度ある事は珍しくなかったが、今や1兆円ソコソコである。証券会社のセールス、セールストレーダー、リサーチ等の知人に話を聞くと、相当の危機感を皆感じて居る。


・日株で「長くて大きなトレンド、投資テーマ」に乗れない、「日株スルー」と言った事態が発生している。

更には日本企業が時代の最先端で活躍する事が減って居るように思われ、日株を使って大きな投資テーマにベット出来ない、と言った事態が最近目立つようにも思う。

例えばiPhoneやiPad、iTunesの台頭、クラウドの普及、データトランザクションの飛躍的増大、と言った投資テーマで、日株でシンプルにベットする先があんまりない!半導体やテックの部品は韓国やら台湾やらで組み立ては中国の製造受託会社で作ると言った状況でわないか!AppleやAkamaiみたいな「投資テーマのど真ん中銘柄」がない!と言った、「日本はスルー状態」の投資テーマが最近目につくように思うのだ。

日株対応は、こう言う大きな話でがばーっと取りに行くと言うよりは、チョッピー相場、細々した話(月次とか、決算の上下とか)でちょこちょこちょこちょこ何とかやる、と言う話が仕事をしていた頃もかなり多かったのが実際の所のように思う。

勿論こう言う対応、基本をしっかりやって、細かいリターンを積み上げて行く事も非常に大事なのだが、これだけだと早耳新聞記者的な要素だけが勝負になってしまうので、プロフェッショナルとしての付加価値が中々出しづらいし、端的に言えば仕事が退屈でつまらなくなる面もある。日々の仕事が、知的挑戦と言うよりは、アルバイトの作業みたいな感じになるからである。まあ単純な事で日銭拾いをせっせとやるのも非常に重要なんだけれども、それだけでは面白くない。面白くないとモチベーションが続かなくなるのでそれは良くない。

また誰でも出来るので、競合の参入障壁も非常に低いアプローチでもある。マーケット参加者としてもサヤが抜きづらくなる事は明白である上に、運用会社を運営する側からビジネスとして考えても、顧客に提供出来る付加価値が「早耳新聞記者だけ」では、顧客に対する訴求力に欠ける点も問題である。これはセルサイドアナリストの存在価値と言う面でもそうだろうし、ロングオンリーでもL/Sでも、日株ブティックの運用会社も共通して直面している問題だろう。

「早耳新聞記者的な基本動作」に加えて、何か「これが付加価値だ」と言えるような戦略やエッジが欲しいものであるし、筆者個人としてもそう言うフロンティアにこそワクワク感を感じられる訳だが、日本株と言う商材を使ってこれを出すのが中々難しい状況にあるのである。


・「新興国投資代替としての日本株」と言う地位も現在は失われている。

話の目先を多少変えてみると、昔は「新興国への投資を、流動性もありIR開示等の信頼性の面でもキチンとしておりValuationもバブルではない日本株経由でやりましょう」と言った触れ込みで日本株の価値を見出す動きもあり、これでもって日本株の専門家の立場がかろうじて保たれていた面も過去にはあった。

しかし、これも現在では説得力を失ってしまった。中国市場の流動性が整備され、IRも英語が堪能な人間がアサインされて英語である程度規模のあるアジア株であれば概ね取材も含めたリサーチが出来てしまう環境が整って来ているからである。IRの国際化対応と言う意味では、日本企業よりも香港や中国上場企業の方がずっと進んでいるようにも思う。


・Valuationでも、「敢えて日本」と言う程の割安感はない。

PERで比較しても、日中で大きな差はなくなっており、成長力の差を考えると、日株に投資するんだったらまず中国株行くよな、と言う状況になってしまっている。


・むすび

そんな訳で、「日株は結局為替だけ」程度のマーケットであったら、為替のストラテジストさえ居れば日株のリサーチカバレッジは完結する事になってしまうし、そんなんだったら直接為替でベットすればいい。わざわざ株をやる意味がない。実際、海外の機関投資家や年金基金等が日株に対して考えているイメージは、こう言う感じだろうと思う。

筆者としても、何とかブレイクスルーを見出したいし、「日本人だって、マーケットでグローバルに戦えるんだぞ」と言った形で一矢報いたいと常々感じて居る。しかし正直な所、中々突破口を見出せずに居る。もう少し言うと、実際にはブレイクスルーのアイデアはあるのだが、これを実行可能な舞台に上がるのが中々難しい、と言った方が正確である。マルチストラテジーやグローバルマクロの運用で日本人が参入する、と言う所が中々むずい。実際、機能が細分化されてしまっていて、マルチやグローバル投資系のファンドでも自身は日株しか担当出来ない、と言った制限がかかる事も多く、これを突破するのが相当難しい。生みの苦しみと言った所か。

そうは言っても、ジム・クレイマーの言う通り、"Always there is bull market somewhere."である。勿論日株自体にだって、ボラティリティがある限り、世の中が動いて変化している限りチャンスはある。否定的に「ここもだめ、あれもきつい」と考えるのではなく、常に「どこかしらチャンスはある」と言う思考で居ると言うのは、創造的な思考を促し、アイデア生成を促し、この商売をやっていく、と言う上で極めて重要である。日株を取り巻く現実をキチンと認識した上で、過去の資産も有効に活用しつつも、柔軟に前向きに行きたいものだ。

2010年9月25日土曜日

大型バイクの免許取得!!!

ヒマにモノ言わせて、この2週間で大型バイクの免許を取得した。中型バイクの免許は持っていたのだが、ここ数年全く乗ってなかったので、教習では小回りでコケるわ、卒業検定でも緊張のあまりあちこち失点を重ねるわで、何と言うか危なっかしかったが、何とか一発合格出来た。今日は頭の中で、ファイナルファンタジーのバトル勝った後のファンファーレ(以下参照)が延々鳴っていた。達成感。


何歳になっても、新しい事、特にこう言う体で覚える系の事を学校に通って学んで覚えると言うのは結構楽しい。

とは言え、金融マン的リスク思考で行くと、バイクは事故に遭うと、かすっただけでも転んでしまうと一発アウトと言うか、人生をおしゃかにしてしまう確率が自動車より遥かに高い面は否めないし、お世辞にも筆者がバイクの運転が凄い上手いかと言うと人並み程度なので、普段使い、特に通勤で使うのはよそうと思っている。busyな道をbusyな時間帯に焦って運転すると、特に危ないからだ。

また、山や高速道路を「攻め」たりする気もない。中型バイクで雨の高速道路を走った事があるが、トラックには吸い寄せられるし、体力消耗するし、結構怖い。峠を攻めたりするのは筆者のようなにわかバイカーがやるのはもっての他で、カーブを攻めるのはバイクだと自動車よりも難易度も高いし危険だ。命知らずの(元)ヘッジファンド運用者がバイクでぶっ飛ばしているの絵、みたいなのはステレオタイプ的には格好良くてよろしいかも知れないし、何かのトレーダーのマンガだか小説だかノンフィクションだかでそう言う描写を見たようにも記憶しているが、別に筆者がそうなる義務はない。無謀なのと胆力があるのは別の話だ。エッジの無い分野でリスキーなポジションを取るのは運用でも運転でも良くない。

後は、二人乗りは(旅先で移動手段がバイク1台しかないとか、本当にどうしても必要な特殊な場合以外は)基本的にやらない積もりだ。運転しづらくなるため更に事故のリスクが上がる上、教習所の教官曰く、自分よりも後ろの同乗者の方が死亡リスクが高いそうだ。友人や恋人をこんなリスクに頻繁に晒す事は出来ない。教習所の教官でさえ、二人乗りは基本的にやらないと言っていた。プロがそう言うのだから、これは守っておこうと思う。

最初の写真に載せたようなハーレーダビッドソンのアメリカンタイプの大型バイクにいつか乗りたいなーと思っていたので、レジャーなんかの時にでも試してみようと思う。アメリカやオーストラリアを旅行する機会があったら、大陸横断/縦断系の事を試してみるのも面白そうである。だだっ広い大自然の道を、焦らずのんびりツーリング。ああ、こう言うのいいなぁ。年取っても出来るし、もっとオヤジになってからの方がハーレーに乗るのはカッコいい気もする。年輪と共に円熟させられる趣味を持つと言うのは、中々に良いものだ。こう言うのが似合うような、円熟したオヤジになろうと誓う筆者であった。

週明けに試験場に行って卒業証書持って免許証を作りに行く感じだ。ついでにパスポートも期限がもうすぐ切れる感じだったので更新したりしている。すっかり夏も終わったし、ぷーのうちに出来る事は概ね終えつつあるかな。。。

2010年9月23日木曜日

秋の夜長の書評集その2:Valuation、ソロスとジムロジャーズ、ナウシカと金融市場について、多少熱く語ってみるのまき。

連休の合間、為替介入が入って株価が少し戻し、だらだらと持続力が無くなり、また介入が入ると場中にぴょこんと株価が上がる、、、「日株は結局為替次第」そのまんまの昨今ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。

さて、過去の書籍電子化に伴う、書評集第2弾、少し紹介したい。気が向きましたら、読書の秋にどうぞ。


○ヘッジファンドもの。

魔術師は市場でよみがえる


・・・90s終わりまで、ソロスのクオンタムファンドと並んでヘッジファンドのスーパースターとして君臨したジュリアンロバートソンと、彼の率いるタイガーファンドの盛衰について書かれた書籍。「調査はしっかり。推奨は単純に。コンセンサスは何か、コンセンサスに織り込まれてなくて自分が知っている有利なキャタリストは何か、価格は安い(買い)なのか高い(売り)なのかを短時間で明瞭に」と言った指摘は、大変に参考になった。



ライアーズ・ポーカー


・・・先に紹介した、「メイクマネー!」より少し前の、80s中葉のソロモンブラザーズについての実話である。当時のジャンクボンドの動向など、これまた当時の金融業界史として、ポストバブル世代のプロフェッショナルには貴重な資料である。また、マイケル・ルイスの文章は非常に面白いし笑える。その点でもお勧め。



ソロス


・・・ジョージ・ソロスの伝記。若い頃は女の子にモテないとか結構世俗的と言うか我々にも共感出来るような結構普通の悩みも持って居た事、生い立ちがトレーディングスタンスにも影響を与えている事、ソロスのような人物でさえキャリアの中で仕事に対するモチベーションの危機や父親としての子育て面の失敗や離婚等の私生活面での危機があった事、そう言った過程の中で心理カウンセリングを受ける事で常日頃感じており成長の阻害要因になっていた「恥の意識のようなもの」を払拭出来てより自然体で過ごす事が出来るようになり次の成長ステップに上がれた事等、個人的な事も含めてかなり仔細に書いてある。大変に参考になる書籍。



ヘッジファンドの帝王


・・・日本では余り有名ではないが、米国では多くのヘッジファンド同業者が「彼は尊敬する」として名前が挙がる、マイケル・スタインハルトの伝記。ジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットが言ってみれば「コカコーラとかポンド危機とかの大物を釣り上げるホームランバッター」であるならば、マイケル・スタインハルトは、「内野安打やシングルヒットを量産する事に卓越している、イチロー型バッター」と言って良いだろう。元々株のアナリストからトレーダーライクなヘッジファンドマネジャーに転身している事もあり、元々アナリストからキャリアをスタートしている筆者的にもかなり参考になった。


○「ど文系」のかたのための金融工学、最初の一歩系。

金融工学の悪魔

金融工学の救世主


・・・以前も紹介したが、文系学生で、金融工学へのとっかかりが全く掴めなくて困っているかたにお勧めである。



Excelで学ぶ金融市場予測の科学


・・・文系出身のかたで、ブラックショールズアレルギーのかたはまずこれを読むと良いと思う。説明がやや饒舌で、「数学者の飲み屋でのよた話」みたいな面もあるので、ここは好き嫌い分かれるかも知れないが、丁寧な説明で非常に分かり易い。



○トレーダーの定番。



魔術師達の心理学


・・・相場の心理学とマネーマネジメントについて書かれた本。トレーダーには必須の一冊だろう。



投資苑


・・・トレーダー必携の本だろう。テクニカル分析、トレードの心理学、ポジションマネジメント等について広範に書かれたもの。




○テクニカル分析幾らか。



ワイルダーのテクニカル分析


・・・RSI等のテクニカル指標の開発者。この手の書籍の古典と言えるだろう。意味を考えながらテクニカル指標が使えると言うのは重要である。



トレーディングシステム徹底比較


・・・随分古いものの上に値段が高いので現在読んで資料的な価値があるかと言うと分からないが、案外シンプルな「移動平均」「チャネルブレイクアウト」やこの手の組み合わせが結構ワークして、複雑な算数処理が為されている指標が存外使えない、と言う結果になっていたりして、中々面白い所である。



○ファンダメンタルとテクニカルの融合、マクロ/ボトムアップバランス型。

オニールの成長株発掘法


・・・CAN-SLIMで有名な著者の代表書籍。キャリアの初期で何度も読んだように思う。ファンダメンタルでセットアップして、キャタリストが必要で、テクニカルをタイミング指標に使う、マクロ経済動向や市場需給指標の活用の仕方、と言ったアイデアについてバランスの取れた考え方を学ぶには今も有用だろう。ジム・クレーマーの書籍と並んで、バランスの取れた内容のように思う。



○アナリスト志望のかたに。

EVA創造の経営


・・・アナリスト志望者のかたにお勧め。ベース知識としてこの位はきちんと読んでおいた方が良かろう。


とは言え、実際には、DCFで将来キャッシュフローを現在価値に割り引くのと、EVAで将来経済付加価値を現在価値に割り引くのはValuationとしては理屈的には一緒になる。


また、実際のトレーディングにおいては株価をこう言った理論価格でもって撃ち抜けると考えるのは幻想でもある。例えば景気も良く金融緩和傾向でグローバルにキャッシュも溢れており、投資家の心理もリスク選好的な際は割引率を5%で評価出来る。一方、これが一転して金融危機になってエクイティリスクプレミアムが急上昇しました、割引率は10%ですとなると、こうなった途端に理論価格は大雑把に元の半分になる。詰まる所、結局はここでも煎じ詰めると「市場参加者のリスクに対する心理状態」が理論価格の最も重要なキードライバーなのであり、DCFやEVAのモデルをキチキチ詰めれば相場に勝てると考えるのは筆者は賛成ではない。こう言う事をピュアボトムアップを哲学とするロングオンリーの運用会社の面接なんかで口走ってしまうと、100%不採用なのでそこは注意が必要ではあるが、これは幾ら大手で面接官がお偉いさん相手でも、筆者の方が正しいと筆者自身は信じている。


そんな訳で、デューデリジェンス自体が仕事であれば話は別だが、相場での勝ち負けだけを考えるとこう言うValuationについて余り細部まで深入りし過ぎる必要は無いと思う。また、アナリストとして仕事する際もDCFでの評価が出来れば概ね問題は無いようにも思う。特にヘッジファンドで運用する場合、タイムホライゾンの短さや機動的な対応を求められる点等を考えると、よほど腰の据わった大きなポジションを取りたいと言う時以外は、毎回こう言うモデルを作らないと売買判断が出来ませんと言うのではワークロード的に持たないようにも思う。


ただ、上記は上記として、「やろうとすればDCFでもEVAでも評価出来るけれども普段は省略している」と言うのと、「こう言う概念を全然知らない」と言うのでは、経験値の段階としてはかなり違うと言うか、見た目の体格は似ていても基礎体力が全然違うスポーツ選手のような感じはする。


例えば、企業の事業内容、ビジネスモデル、収益性、キャッシュフローの出方や入り方、株主還元の方針、伝統的なバリュー投資家が考えて居るであろう株価のレンジ感、と言った所にについての理解を深める事はValuation作成過程で出来るだろう。更には、こう言う事をやっていた経験があると、このプロセスを省略する際も、上記のような事柄についてのある程度の「暗算での目星」は立つようになる。その他、管理会計としてEVAやその応用でもって事業管理をしている事業会社の財務等とディスカッションをする際、EVAを知らないと議論が出来ないと言う面もある。そんな訳で、アナリストの場合は、本書の内容位は嗜みとして知っておいた方が良いと思う。



企業価値評価 実践編


・・・これもValuationの書籍だが、これは筆者は通読はしていない。仕事していれば概ね当たり前の内容だからである。ただ、細かい勘定科目をValuationを作る際にどう処理するかについてきちんと書いてある上、日本の会計制度、日本企業のケーススタディのもとでキチンと書いてあるのが、この手の英語の本の日本語訳と違った、本書の価値のある点である。辞書的に手許に持っておくと便利かも知れない。



MBA経営戦略

MBAゲーム理論


・・・学生さん等がコンパクトに各種理論を学ぶには良いシリーズだと思う。



成功者の告白


・・・これも以前も紹介したが、新興企業の誕生、発展、衰退の背景を理解するのに非常に向いている一冊。筆者も急成長して崩壊した運用会社で勤務していた事があるが、概ね同様の過程を辿った事には驚いたし、翻ってアナリストとして中小型株等観る上でも大変に参考になった。




○人間心理と市場について。


市場と感情の経済学


・・・行動ファイナンスの分野の大家であるリチャード・セイラー(ターラーと書いた方が発音的には近いのだろうか)の、行動ファイナンスの先駆け的書籍。行動ファイナンスブームでここ最近書かれた本のクオリティは善し悪しあると思うので、キチンと学びたいかたはこう言った大御所の書籍を当たる方が良いように思う。



狂気とバブル


・・・チューリップバブル、南海泡沫バブル、ミシシッピバブル等のバブルから、果ては魔女狩り等まで、古今の「集団の狂気」の仕組みをプロセスについて書いてある大著。ここまで来ると趣味の世界と言うか、ちょっと実用書としては分量が多過ぎるので、時間のあるかた用のようにも思う。とは言え、バブルとその崩壊の歴史であるとか、群衆行動についての研究と言うのは分野としては大変に興味深い分野である。




○その他相場/金融トリビアもの。

リスク 神々への反逆


・・・この著者の書いたゴールドと並んで、名著。この密度の書籍は中々書けるものではない。リスクと言う観点から、統計学の発展や、それがどのような形で金融の分野に適用されるようになったのかについての歴史を興味深く知る事が出来る。相場に即役立つ訳ではないが、歴史を学ぶ事は価値があるし、市場参加者の教養と言った所だろうか。



大投資家ジムロジャーズ 世界を行く

冒険投資家 ジム・ロジャーズ世界大発見


・・・これらのジムロジャーズの本は、評価は見方によって二分するだろう。筆者的には、旅行記としてはイマイチ、国際投資の本としては素晴らしい、である。

まずは前者の評価から。旅行記としてはイマイチである。理由は、ジム・ロジャーズは世界中のあちこちを旅行しはするが、彼は旅先で自身の価値観を覆されたり、人生観が突き動かされたりするような体験は余りしていないようにも見受けられるからである。言ってみれば「資本至上主義万歳、アメリカ万歳、俺はマーケットで儲けたスマートなヤツで、成功者なんだぜ、しかもこうやって治安の悪い地域も世界旅行して、どうだワイルドだろう」と言う単純思考でもって大型バイクやベンツで世界を突っ切るような旅行スタイルのようにも見受けられるのである。

旅先の人間からすればこう言う金持ちのアメリカ人は鼻に付くだろう上に、そう言った「ゴーマンで成功した金持ちのアメリカ人って、周辺国から観ると結構はた迷惑な存在なんですけど」と言った面についての、本当の意味においての「国際人」としての自覚は彼の記述からは余り感じられない。「自身を国際社会において相対化する視点」と言った高尚な自覚が、彼からは余り見受けられないように思われるのである。

旅行記の醍醐味は、旅行の過程で人生観や価値観を震わせるような経験をする、と言う所にあるのではないかと筆者は思う訳で、翻ってそう言う意味において、これらの本は旅行記としての瑞々しさには欠けるように思う。

更に個人的な余談ではあり恐縮だが、ジム・ロジャーズは投資家/投機家としては勿論大いに尊敬するが、人柄・性格的には上記で述べたような理由で、筆者的には多少鼻に付く面は感じる。更には私生活の面など、ジム・ロジャーズの場合は上記2冊の間に、大した説明もなく知らぬ間に一緒に旅行する女性のお相手(どちらも若い姉ちゃん)が変わっていて、その上最近の書籍では60代になって初めて子供が出来て大喜びなのか臆面もなく親バカな書籍を書いたりしているし、「なんつーかねぇ」と思う面もあったりする。


一方で、元々ジムロジャーズと一緒に仕事をしていたジョージ・ソロスの方が、勿論性格的には彼も(と言うかソロスの方が)強烈な所もあるにせよ、人柄・性格的には納得感がある面も多いように思う。例えば幾つになっても哲学家に憧れているようなナイーブな一面が見られたり、モチベーションの危機や私生活の失敗、ヘッジファンドの経営者としては余り上出来とは言えない等について、彼お得意の「誤謬性」の考え方を基にしているのか伝記等の中で赤裸々に反省していたりもする。国際感覚の面においても、(せがれの方、オバマの前に大統領だった)ブッシュ大統領を「アメリカ人の独善的な正義を快く思って居ない人々は世界中に沢山居る、この点を自覚しないといけない」と言った趣旨で強烈に批判していたりして、元々アメリカ人ではなく移民である事もあるせいか、アメリカかぶれし過ぎていない。筆者的にはキャラ的には、(どちらも基本線、全然別世界の人々なんだが)ソロスの方が共感出来る面がまだ見出し得るように思う。

この辺はジム・ロジャーズとジョージ・ソロスは元々はクオンタムファンドでコンビを組んで居たものの、性格的には対照的のようにも思う。あくまで個人的な感想だが。

話を書籍の書評に戻そう。旅行記として見た場合は結構けちょんけちょんに批判してしまったが、一方で、国際投資の書籍として読むとジム・ロジャーズの本は大変に参考になる。

コモディティブームが始まる前から農場への投資を検討していたり、現在のようにアフリカ株がブームになったりするだいぶ前、証券取引所の制度や決済等が成熟していないうちからリスクを取って口座を作って株を買ってみながらちゃんと決済が出来るのか確認したりしている様は大変に興味をそそられる。流動性が無いとか、法制度や決済面でリスクがあるとなると普通は手出ししない、出来ないのが普通ではあるが、一方でそう言う市場こそ上手く行くと非常に大きな果実が得られるのも事実である。

更には、上記書籍が発行された後、ジム・ロジャーズはサブプライム危機が深刻化する直前、米国の地価が下がる前にニューヨーク郊外の豪邸を高値で売却して、新興国投資をするためにシンガポールに移住している。流動性の無い自宅を売却するとか、住むベースから変えるとか言う事を適時にやるのは相当に難しい。こう言うグローバル投資についてのセンスはジム・ロジャーズは凄いなーと感嘆するし、非常に考えさせられる所である。


僕はこうやって11回転職に成功した


・・・以前紹介した本だが、運用業界のガイドブックとしても秀逸であるし、山一証券の破綻に著者がタイムリーに出くわしていて状況が仔細に書いてある等、80s中葉〜2000年位までの金融業界史としても大変に優れた本である。



お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方


・・・筆者は個人的にはPT(Perpetual Traveler。世界中を転々として、税金を回避するライフスタイルの事)には必ずしも諸手を上げて賛成と言う訳ではない。警察や消防等の生活必須のインフラを使用している事に対する感謝を示すべく、言ってみれば国家に対するショバ代は、メインで生活している国でキチンと払った方が良かろうとも思うからである。とは言え、年金制度の歪み等を始めとして、この著者の書籍内容は全般に非常に良く調べた上でディープな記載がなされており、深く考えさせられるものがある。



ウォール街で勝つ法則


・・・結構昔のものだが、米国の株式市場を50年分調べてアノマリーを探した本。この書籍が出て以来、この本のアノマリーは市場に周知のものになってしまい、現在は余り効かなくなってしまっているそうで、こう言う面がある点は留意が必要。しかし、「バリューかつグロース(今で言うGARP、Growth At Reasonable Price的な考え方)」と言った概念を始めとした本書の発想は、バリューかグロースかと言った安易な二分法に囚われがちであった時分の書籍としては画期的な内容だったと思う。



○まともな内容の「成功本」幾つか。

7つの習慣


・・・基本的に筆者は「成功本」の類いは余り好きではないが、この本は数少ない「読むに値する成功本」だと思う。表面的な「デキる人的にふるまうテクニック」は本質的なものではなく、ものの考え方、適切なself esteem(自己有価値感)を持つ事から始めて、人格の幹をきちんと確立する事が重要で、その上で手帳や時間管理等のテクニックを活用して初めて生きて来る、と言った真っ当で良心的な内容が書いてある。



道は開ける


・・・成功哲学本としては定番の一冊だが、「最悪の事態を想定し、受け入れて、対処法を考えて、行動する」と言った思考特性は相場をやる上でも重要な事のように思う。



夢をかなえるゾウ


・・・千里の道も一歩から、日常の小さな生活改善の積み重ねの重要性について確認出来る本。



○その他諸々。

図説 風水大全


・・・日本で風水を持ち出すと往々にして変人扱いなので注意が必要だが、香港等では金融と風水と言う組み合わせは極めて自然であり、HSBCのビル等も風水に基づいて立地、設計が決められている。本書は比較的基本的な内容が押さえられて居るので、この位知っておいて損はない。基本線はまあ、適度に陽当たりや風通しが良く、崖崩れや水害等の災害のリスクが無い程度に適度に山や水が周囲にあって、適度に解放感があると同時にプライバシーが守られて居る、と言った感覚的に心地よい家は風水的には悪く無い訳だが、色々勉強になる。



日本に足りない軍事力


・・・著者は、「多分多くの人がテレビで見た事のある、髪型が驚きの1:9分けのアノ軍事評論家」である。髪型の話はさておき、内容は日本の防衛関連について、感情的な要素を排して淡々とリサーチしてあり、勉強になる。直接相場の足しになる事は余りないのだが、防衛関連について基本的な知識があると、国際政治等考える際に参考になる事がある。著者は既に逝去されており、個人的に大変に残念である。冥福をお祈りしたい。




・・・これは相場云々でなく、趣味の世界。まず、端的に美人である。実際は日本人だが戦中は中国人スターとして活躍し、戦後に死刑を間一髪で逃れ、戦後はアメリカや香港でも映画出演している等、事実は小説よりも奇なり、を地で行っているようなドラマティックな人生である。また、戦中の満州の状況のノンフィクションとして読むのも面白い。登場人物は、甘粕正彦に川島芳子等等、歴史好きからすると正に小説のようなメンバーで、大変に面白く読める。時代の激変期にどう生きるのかについて、考えさせられる面もなる。



発酵道


・・・ストレスを溜めて競争競争で心身共に疲弊し切ってキリキリ頑張って稼ぐのではなく、自然の流れに沿いながらニッチに特化してビジネスとしても一定の成功を収める、と言うこれからの日本社会に求められる成功事例のケーススタディのような本。最近の筆者は酒を余り飲まないので最近は飲んでいないが、寺田本家の日本酒は実際大変に旨いし翌日に酔いが残らず、飲む事で書籍の内容の説得力が更に増すように思う。



風の谷のナウシカ


・・・これは映画版だけでなく、漫画の原作を全7巻読んで欲しい。例えば映画版だと、ナウシカが単純にマリア様のような性格造形で描かれているが、漫画の原作だともっと人間らしく、人間描写が深い。例えば、話の最後の方で、精神汚染で攻撃して来る相手が居て、「ナウシカ、あんたは自然と動物を愛でていい子ちゃんの積もりだろうが、あんたただのカマトトじゃねえか、戦争にも参加してるし、人だって殺してる、色んな人に迷惑もかけてさぁ」と言った、言ってみればネチネチ系精神アタックを仕掛けて来る訳だが、最終的には「うるせえ文句あっか、清浄と汚濁こそが人間だ」(言葉遣いはもうちょっと女性らしいが)と開き直っている。クシャナと言った主要キャラの造形も映画寄り原作の方がキチンと描き込まれている。また、「全にして個、個にして全」の王蟲を始めとした腐海の生態系の設定も大変に面白いし、その腐海の構造をナウシカがストリート生物学者さながらに奥深く分け入って探究して行くプロセスも、大変に内容が深い。


筆者も、相場の仕事をするにつけ、例えばバブルの生成と崩壊に中央銀行の蛇口の開け閉めが大いに関わっている事、景気予測は煎じ詰めると結局「市場参加者や企業、家計の心理状態に帰着される」と言う事、バブルの熱狂が悲劇を生むと共に人類の進歩やイノベーションのキッカケになっている事、等に気づいた時は、この漫画の世界に居るような気分にちょっぴりなったものだ。まあ立ち位置的には、「トルメキアなり風の谷なりドルクなりの一平卒」からの視点かも知れないが、物語をナウシカやクシャナを中心にして上から俯瞰して見る「神としての読者」からすれば一平卒は脇役だが、一平卒本人の視点から見れば自分が主人公である。有名/無名を問わず、マーケット参加者皆それぞれに、「他でもない、その人の物語」があるものだ。


ちなみに、「バブルの熱狂が悲劇を生むと共に人類の進歩やイノベーションのキッカケになっている」と言うのは多少分かりづらいかも知れないので解説しておくと、こんな感じである。


1、中央銀行がマネーを大量に刷る。


2、銀行の乗数効果で効果が増幅される。銀行は増幅器の導管の役割を果たす。しばしば「銀行株が冴えないうちは相場全体は中々上がらない」と言うのは、詰まる所銀行が貸出を増やして、借りた側が設備投資を打ったり、株だの不動産だの金融商品だのを買ったりすると言う乗数効果が効いてくれないと、金融緩和の効果が出ないからである。


3、不動産、光ファイバー網、コモディティ、証券化/デリバティブブーム等、その時々の投資テーマに大量に余剰マネーが投下される。アセットクラスは、ジャンクボンド、株、コモディティ市場、不動産、デリバティブ市場等、様々。地域も、過去のバブル期には日本も対象になったし、中国、シリコンバレー、その他新興国等等とその時々のテーマで異なる。ここで情報、リサーチ感度の鋭さが求められる。後で振り返れば後講釈は簡単でも、事前に、あるいは過程が進行中に現在進行形で「次のバブル/バースト分野」に気づいてインテンシヴにリサーチするのは結構難しく、常に心の準備が出来ている必要がある


4、多くの人々が熱狂し、バブルになる。


5、中央銀行の金融引き締め、時代を代表する企業の墜落(例:エンロン、ライブドア等が好例)等により、人々の熱狂が一気に醒め、バブルが崩壊する。


6、バブルの頃に資本が大量投下された不動産や光ファイバー網、人材等は設備過剰となり、打ち捨てられる。こう言ったバブル崩壊銘柄が短期的に元の水準まで復活する事はない。バブル期に「天井なしに需要が伸びる」と言う前提で投資がなされてしまっているため、供給過剰は中々解消しないからである。


7、バブル崩壊で大やけどを負って消えてゆく者も多数出る一方で、「バブルによって過剰投資されて供給過剰になったインフラを土台として」あらたな進歩やイノベーションの芽が出て来る。つまり、不動産バブルの結果供給過剰になり安くなった不動産家賃のお陰で、ベンチャーを安価な家賃で起業出来る。ITバブルの結果過剰投資されて余剰となった光ファイバー網のお陰でインターネット網を無料に近い安価で常時接続可能になり、それにより楽天やグーグル等の新しいサービスが生まれるキッカケになる。この頃には中央銀行も金融緩和をかなり行っており、資金調達環境が徐々に改善して来る事もこれら企業を後押しする。


・・・と言った案配。何と言うか、「ナウシカで言う腐海のような、えも言われぬ独特の生態系」が、金融市場と言う腐海と実態経済の間で営まれている感じがするなぁと筆者的に思う訳である。(読者に果たしてニュアンスが伝わっているかどうか、自信が無いけれども)


腐海の森を焼き払ってはだめ、一見人間に害でも、森は汚れた土壌を浄化しているから。

王蟲を攻撃しては駄目。一見人間に対して攻撃的に見えるけれども、あの子達は全にして個、個にして全(量子物理のような世界観である)で、土壌を浄化する腐海の森を守っているから。


これがナウシカの気づいた結果であるならば、相場においては、こんな感じだろうか。


金融市場と言う腐海のバブルとその崩壊を否定してはその本質は見えない。人間はバブルに熱狂するから愚かな事もするしバブルが崩壊すれば多数の不幸も生まれるけれども、人間は熱狂するからこそ、イノベーションも起きるものだから。皆が古典派経済学者の想定するような冷静太郎や興醒め花子じゃ、過去を一足飛びするようなイノベーションも生まれないのだから。

ヘッジファンドを頭ごなしに否定し攻撃しているのでは、その本質は見えない。彼らは一見攻撃的に見えるし、彼らが全にして個でも個にして全と言う程ご高尚な存在なのかどうかは正直知らないけれども、少なくとも彼らのリスクテイキング活動もある事で、全体として進歩やイノベーションが促されていると言う面もあるのだから。


ナウシカの原作を相場関連書籍としても推奨するのは、こう言う事について考えるキッカケを得られるからである。ナウシカが腐海遊びが好きな様子も、気持ち的には良く分かる。筆者も、まだまだマーケットの腐海の入口程度を見たに過ぎない。日本が世界に誇る巨匠、宮崎駿って深いなあーと感嘆する事しきりである。



・・・こんな所で。皆様良い週末を。