2009年11月2日月曜日

職種:ヘッジファンド運用者になるためにはどんな職種が近いのか?

(出所:http://www.istockphoto.com/

日系か外資かの次は、職種である。これも比較的頻繁に聞かれる事なので、この機会に書いておこうと思う。

ただ、ここでも、あくまで「ヘッジファンドの運用者になると言う事を当面のゴールとした場合」についてである。
例えばバックオフィスがヘッジファンド運用者になるのに適していない等と記載する場合、職種の優劣を意味する訳では無い。
決済やコンプライアンス等のバックオフィスにもプロフェッショナルは居るし、彼らが居ないと運用者だって仕事が成り立たない。
この辺りの点についてご理解頂いた上で読んで頂きたい。


○ヘッジファンドに比較的転職しやすい職種


〜証券会社〜
端的に言えば、証券会社では株式や債券やクオンツ分析のアナリスト、あるいはトレーディング、営業等の、マーケット関連のフロントオフィスに入る必要がある。こう言った職種からヘッジファンドに転向している人はかなり多い。また、投資銀行部門から、株式系ヘッジファンドのアナリストに転向して、後にファンドマネジャーになる者もいる。

ただし、ヘッジファンドに行くのがゴールである場合、株のアナリスト、セールス、トレーディング、投資銀行部門のバンカー等の仕事を長くやり過ぎるとそれはそれで手癖が付いてしまうので注意を要する。

株のアナリストは個別企業の分析をしてレポートを書き顧客である機関投資家に説明するのが仕事であり、実際にポートフォリオを運用してリターンを出す事が仕事ではない。セールス、トレーディングも同様で、顧客のために説明したり、顧客の注文を執行したりするのが仕事であり、運用そのものではない。投資銀行部門もM&Aの仲介や株や債券の引き受け販売等が仕事であり、運用でリターンを上げる事をゴールとする仕事ではない。

セルサイドの仕事とヘッジファンドの運用は、スキル的に部分的に同一な部分も勿論あるが、異なる面もかなりある。

新卒の学生さんであれば、セルサイドのキャリアを3−5年位まとまってやってみて、その時点でセルサイドをずっと続けるか、ヘッジファンドで運用の仕事をしたいのか考えてみると良いと思う。ヘッジファンド側もあまり手癖が付き過ぎたシニア過ぎる人より、若手〜中堅位の人材を好む傾向にあるので若いうちのほうが転職しやすいと言う面は、一般論としてはある。

とは言え、かなりシニアな人やセルサイドの大御所的な人がヘッジファンドに転職したり、ヘッジファンドを立ち上げたりする事も無い訳ではないので、最終的にはその人次第、ケースバイケースではある。


〜運用会社〜
運用会社では、ジュニアの職種では、株や債券のジュニアアナリスト、ファンドマネジャーのジュニア(ファンドマネジャーの各種サポートを行う)、と言った職種がヘッジファンド運用者になるための道のりとしては一番近いであろう。日系/外資の運用会社でファンドマネジャーになり、トラックレコードを作ってヘッジファンドに行くと言うのが理想であるし、あるいはアナリストのままアナリストとしてヘッジファンドに転職するケースもある。

運用会社の場合も、一般の大手の運用会社の伝統的な運用(ベンチマークがTopixで、業種ウエイトや個別株のウエイトを微妙にコントロールしてアウトパフォームを狙うような運用)と、ヘッジファンドの運用ではだいぶ趣き、必要なスキル、スピード感、カルチャー等が異なるので、場合によっては余り長居しすぎないほうが良いかも知れない。若い人であれば数年運用会社でアナリストでもやってヘッジファンドに転職を考えるのも手である。あるいは比較的若いうちからファンドマネジャーにしてくれて自分のトラックレコードが作れるような有り難い運用会社(大手の運用会社は往々にして年功序列的色彩が強いのでこれが中々無いんだが)の場合でも、アナリスト期間数年+運用者期間数年で、運用者としての数年のトラックレコード(運用実績)を作って自信が出来たらヘッジファンドに転向した方が良いかも知れない。証券会社の場合同様、ヘッジファンド側も余りロングオンリーの伝統的運用で手垢、手癖が付き過ぎた運用会社の人材を雇おうとはしないケースも多いのである。

とは言え、かなりセルサイド同様、かなりシニアな人や大御所的な人がヘッジファンドに転職したり、ヘッジファンドを立ち上げたりする事も無い訳ではないので、運用会社からキャリアを始められるかたも、最終的にはその人次第、ケースバイケースではある。


〜銀行〜
債券や為替の分野だと銀行の債券/為替の運用に携わっていた人がヘッジファンドに来る事もある。しかし特に日本の銀行だと新卒で入行すると過半は融資等の支店業務が中心で運用に携わるケースはかなりまれである。ヘッジファンドに行きたいからキャリアの第一ステップとして銀行に入る、と言うのはポイントがずれているように思う。

どちらかと言うと、銀行に入ったら、ごく低い確率でたまたま為替や債券のトレーディングや運用の部署に携わる事になり、やってみたら面白くて、銀行に居ると色々運用上の制限もあるし出来高給でもないので結果としてヘッジファンドに来た、と言うケースが多いように思う。


〜その他〜
その他、金融業界以外の業界としては、戦略系コンサルのコンサルタントからヘッジファンド業界に入る者も居る。しかしこれは比較的マイナーな事例で、アクティビストやプライベートエクイティ等の経営改善についての提言を含むようなファンドの場合に限られる。ただ、戦略系コンサルから証券会社や運用会社の株のアナリストを経て、株式系のヘッジファンドに移る者は居る。コンサル業界で学ぶ企業分析のスキルが株の分析に使えると言う面はあると思う。

ただし、コンサルから金融業界に移る場合、金融市場やマクロ経済等についての体感的理解を身につけたり、コンサルのノリから金融のノリに慣れるのに少々時間を要する事もあるので、コンサル業界を出るのは遅くなり過ぎない方がいい。

端的に言えば、コンサル的にロジカルでMECEであれば市場で勝てると言う訳ではない(むしろロジカルさに拘り過ぎる事が運用上は邪魔になる面もある)し、プレゼンの巧拙等は運用でリターンを上げる事とは関係ない(顧客説明等の際には重宝するが)。

コンサルからヘッジファンドに行く事を考える場合、20代のうち、経験年数で言えば3〜5年以内位で証券会社や運用会社のアナリスト、アクティビスト系ファンドのアナリスト等に転職するのが良いと思う。コンサルで10年やってしまったらマーケットの運用にシフトするのは難しいと思う。


○ヘッジファンドで運用の仕事がしたいなら、フロントオフィスに行く事。

ポイントとしては、証券会社にせよ運用会社にせよフロントオフィスに入る事である。
そして株にせよ債券にせよ投資銀行部門でも、金融市場や企業価値評価に関われる仕事を選ぶ事である。
決済、総務、IT等のバックオフィス業務勤務から、フロント業務であるヘッジファンド運用者に転向する事は、外資系勤務であれ日系勤務であれ、かなり難しい。特に外資系で顕著だが、金融業界においてフロントオフィスとバックオフィスは明確に異なるキャリアステップとして区別されているのである。

また、日系企業でよくあるような「総合職」「支店営業配属」と言ったアバウトな採用カテゴリーで採用されて色々な業務を経験すると言うのは余りお勧めしない。ヘッジファンドの運用者と言うのは極めて専門化された業務分野であり、ジェネラルな知識だけではどうにもならないと思う。職種別採用枠がある会社で、金融市場に詳しくなれるような先に挙げたような職種に入るのが良いと思う。

とは言え、「職種別採用で基本的には金融市場のプロフェッショナルになる事を前提としながら、比較的広い範囲の研修/軽いOJTを受けられる」と言ったような状況があるなら活かすのも良いと思う。筆者も、株のアナリストのキャリアが中心ではあるが、一時的に不良債権の評価をしたり、トレーディング部に所属してOJTをしたり、単発プロジェクトものでM&Aのデューデリジェンスに参加したり、顧客にプレゼンしたりの経験は運用の面でもそれはそれで、上場株のアナリストだけやっていたのに比べてマーケットや株式、企業の見方が広がる面もあり、存外貴重だった。

5 件のコメント:

  1. 初めまして。 私はこの1月にIT業界のエンジニアから、プロップファームのディーラー(デイトレーダー)に転職した30歳男性です。

    ヘッジファンドの運用者を最終目標にしていますが、今の職場では短期的な投機の経験のみしか得られません。ステップとして、他の職場で中長期のトレードも経験する必要がありますでしょうか?
    宜しくお願いします。

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  2. サイトに訪問頂き、ありがとうございます。ヘッジファンドの運用者でしたら、デイトレーダーでも大丈夫だと思います。今の職場で安定したトラックレコードを積み上げられると良いと思います。宜しくお願いします。

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  3. ご回答ありがとうございました。感謝しております。
    今の職場で安定したトラックレコードを積み上げられるよう努力・精進いたします。

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  4. 匿名7/31/2014

    初めまして。
    私は、紙に書いた履歴書、職歴では丸っきりの素人の50歳男性です。

    FX市場での”生身”の人間がモニターの前でトレードが出来るタイムフレームで、中長期のトレンドフォロー、スイング混合のシステムトレードを構築しました。
    長めの時間足や日足等が主体のトレードになり、しかもトレンドフォローですので、月単位や四半期ベースであってもコンスタントな黒字化は難しいかも知れません。

    私なりに必死になって和製ヘッジファンドをネット検索し、売買理論とレコード等を合せた資料を送付してみました。
    もちろん、何らかの反応、お返事を頂けたところは皆無ですが・・・・

    先日、あるプロップに応募し、仮契約の為の面談まで漕ぎつけました。
    ですが、やはり短期的なパフォーマンスの出方を求められていたのでしょうか、結局は破談になりました。
    三ヶ月、月次どころか週単位でのパフォーマンスを期待されていたようです。
    面談に至るまでの過程も大変でしたが、自身に考えさせられる気が付かされる所もあり、面談までして頂いた事を今では感謝しています。

    素人ながらR倍数やペイオフレシオの類で判断した、リスクに対するリターンは自信を持ってある!と言えます。
    更に株式市場とは相関性のないトレードスタイルにならざるを得ませんので、
    どこかシステムを採用して戴けるところがあるのではと思っていたのですが、どうも思い違いだったようです。

    半年単位、或いは年単位でしか測れないトレンドフォロー型は需要が無いのでしょうか。
    それとも、そういったタイプの運用者になる為には高いハードルがあるのでしょうか。

    私は歳も歳ですし、無駄な事なのかと思いつつチャレンジしていましたが、もうそろそろ・・・・
    かなり後ろ向きのコメントで申し訳ありませんでした。

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  5. 匿名様:

    コメントありがとうございます。お気持ちは十分伝わって参りました。

    しかし残念ですが、トレード戦略云々以前の別の理由で、匿名様がヘッジファンド業界に参入するのは難しいと思います。
    今回はこの点について記載しておきます。最後に匿名様がそれでもなおヘッジファンド業界に参戦されたい場合はどうすれば良いかを記載して終えたいと思います。

    ○そもそもヘッジファンド業界に参入するのが難しい理由。

    なぜ匿名様がこれからヘッジファンド業界に参入するのが難しいと考えているかと言うと、ヘッジファンド業界は成熟業界化が進んだからです。

    ヘッジファンドも確立されたアセットクラスとして定着し、業界内で大手への集約が進んでいます。顧客層も年金基金等のEstablishedなクライアント、高い信頼性を必要とする顧客の比率が増えています。

    こうした状況がある事に加えて、米国のマドフ事件、日本でもAIJ投資顧問の詐欺事件等があった事もあり、ヘッジファンド側でもコンプライアンス等の充実、言ってみれば「胡散臭くない存在であると社会や顧客に示す事」の重要性が高まっています。

    こうした状況に伴い、ヘッジファンド業界従事者の中身も変わって来ています。昔は色々な人が居た面もあるのですが、昨今はいわゆる高学歴で大手証券会社・運用会社に長期間従事した実績のある経験者が殆どです。ヘッジファンドの運用者やアナリストの職は、以前でしたら履歴書に書くと少々怪しい感じでしたが、昨今ですと履歴書に書いても全く問題なくなりました。それどころか、今や良くも悪くも一流校MBA卒業者や大手投資銀行勤務者等からも憧れの業界となってしまった現実があります。一言で言えば最初の通りで、ヘッジファンド業界も「成熟段階に入った」と言う事でしょう。

    こうした状況があるので、昨今ですと全くの業界未経験者の個人がヘッジファンド業界に応募しても、提案するトレードシステムがどんなものであろうと、そもそもの所で通らないかと思います。

    ○お客様のお金を受託して相場をやると言うこと

    ヘッジファンドと言っても実態は「ある一定の運用スタイルを取っている運用会社」です。顧客・他人様のお金をお預かりし、それを法令順守等にも気を配りながら適切に運用し、リターンをお返しする、と言うサービス業です。勿論相場が上手い事はこの仕事の上で重要ですが、それ以前に他人のお客様のお金をお預かりして運用するに足る企業・人物なのかと言う顧客への信頼が土台として重要です。

    個人のかたですとどうしてもこの辺りの「自身の手金で相場をやるのと、顧客のお金をお預かりしてビジネスとして相場をやる事の違い」への理解が感覚的に出来ていないかたが多いようにも見受けられます。

    しかし実際は今まで述べた通りで、「履歴書は全く素人だ。証券会社でも運用会社でも実績を出した経歴はない。でも個人でトレードはやっていて、パンローリングの本など参考にしながらトレードシステムを作り、幾らか収益は出てる感じだ、運用させてくれないか」と言って話が通じる段階の業界では最早ないと言う事です。顧客側の視点に立ってみて、そうした海とも山とも知れない人物に最低でも数億円~のお金を、トレードシステム云々の以前に託したくなるでしょうか(ならないです)。ヘッジファンドの顧客が預けたくならないのであれば、ヘッジファンドもそうした人物は採用しません。

    先の質問者のITエンジニア出身のかたですと、恐らくITエンジニアとしての経歴・実績・信用があり、採用に至ったのだと思います。トレードの時間軸が短くなるほど金融と言うよりITと言う色合いが濃くなりますし、確かに昨今エンジニアや理系研究者からのHFTあるいはクオンツ運用に移籍する例は増えています。

    しかしこの場合も「エンジニアや研究者として金融市場で応用可能そうな実績、信用」が必要である事は言うまでもありません。匿名様におかれましては残念かも知れませんが、これが現実です。ヘッジファンドに運用者として入社するのは潔く諦められる事をお勧めします。まずこの点をご理解頂けると幸いです。

    ○それでもなおヘッジファンド業界に参入されたい場合。

    それでもなおヘッジファンド業界に参入されたい場合は、個人投資家として活躍して10億円以上の財を成し、ひふみ投信に入社し、その後独立した五月氏などを参考にされるのが良いと思います。

    履歴書的に素人の個人が社会・顧客からの信頼を「相場で・トレードで」勝ち得る手段としては、まずは個人でトレード・投資を行い、実際にお金持ちになる事です。そしてその知見をブログでも何でも良いですが社会に発信し、日経新聞等でも採り上げて貰える段階になる事でしょう。その際もただの金持ち自慢、シストレ自慢と言う事ではなく、経済・金融市場等について見識があると社会から、あるいはヘッジファンドの顧客である年金基金他のEstablishedな投資家からも信頼して貰えるような、一定の「格調高さ」が必要かと思います。(例えば五月氏の企業分析やお金についての考え方等書かれたブログやメディアでの発言は、その水準を満たしていたと思います。)

    そうすれば、アセットクラスは何であっても(=株ではなくても)、五月氏がひふみ投信から声がかかったように、どこかしらの運用会社、ヘッジファンド等から声がかかる可能性はあると思います。ただ、そこまで金銭的に成功した段階で敢えて運用会社・ヘッジファンドに入社する必要があるのかと言うと、(金銭面が目的でヘッジファンドに入られたいと言う事でしたら)余りないようにも思います。

    以上、宜しくお願いします。

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